『ゴジラS.P(シンギュラ・ポイント)』【小説】 | 時代劇 実験室

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この小説のなかで、「説明」が充分になされていないところについて、「(その詳細は)別のお話へと譲る。」という記述が何度か出てくる。

登場する怪獣・ロボットたちが、昭和・平成と創られてきたゴジラ作品…円谷作品のキャラクターを踏襲しているらしかったので、

別のお話…とは、それら過去の作品かと思われたが、読み進めてみると、どうもNetflixで公開されている、同名のアニメ作品であることがわかった。

実際、読了して…
アニメで描き切れなかったのが、この小説であり、またこの小説によって難解な部分が多いアニメの理解も深まるという…そうした関係性であるのがわかる。

正直思うのは、小説単品では、完成している感じはせず、登場人物の容姿・性別の書きこみもほとんどないので(加えて男性・女性どちらとも思えるキャラクター名が多いので【有川ユン♂】)、

そもそもアニメを観ていないと、キャラクターに感情移入しにくい書かれ方がされていると思う。


物語の幹は把握できる。たが枝葉に、難解な専門用語や伏線が多く、アニメも小説も、それらは薄目でいったんやりすごさないと、幹の把握も出来なくなる作風。

子供頃背伸びして観た、『JFK』を思い出す。子供の頭では、国家の複雑な構成も、陰謀論もちんぷんかんぷんで、あの映画が持つ、社会批判の部分はとても理解出来なかった。

作風…その匂いでいったら、最近観た、ドラマ、


『ロスト・シンボル』とも似ているか。情報量がとにかく多く、専門用語もいちいち調べないと判らないが、知的好奇心をくすぐられるというやつ。

アニメは2周して、小説まで読んだのだから、まあ、まんまとのせられて、沼にはまったようなかんじ。まわりくどかったです!つまり面白かった。

空想科学小説ではあるが、その主題は、「どんな悲惨な結末が見えていても、やるべきことはやらなければならない!」といったことだと思われた。

コロナ禍に読んだ『ペスト』に主題が似ていたように感じた。また、《エピローグ》手前の…

「われわれに汲み尽くせないものがそこに有るということ自体が奇跡であって、そこにはわれわれではない存在があり、それはわれわれに良心をもたらすもので、それはとても素晴らしいことである」という一文が、特に気に入った。

それが《ゴジラ》と言ったら、ただのお話としか感じられないが、

思えば、自分のこの体のさえ、いつ病気になるのか、滅びるのか、思い通りになるものではなく、傲慢に、何でも理解しているように、

ひとや物事に接することをいましめられているような気になった。わからない単語が多く、小説2周目は、ちょっと間隔をあけないときつい気がするが(笑)、アニメと一緒に誰かに薦めたくはなる作品だった。