2014年4月
あの隕石落下の災害から半年経った。
自分たちの町を失った町民は途方に暮れたけど、次第に離れて暮らす家族の元へ向かう人、遠い親戚に引き取られる人などに分かれていった。
私とおばあちゃん、妹の三葉は隣町に建てられた仮設住宅に移り住んだ。
元々が田舎だったから便利な生活は求めていなかったけれど、最低限のライフラインと3人で住むには少し狭い部屋で暮らすのは最初は戸惑いもあった。
けど同じようにサヤちんやテッシーも仮設住宅に移り住んだ。気心知れた友達がそばにいるのはやっぱり心強い。
今は3人とも隣町の高校に通っている。
お昼休み、校庭の隅でお弁当の卵焼きを口に入れようとした時に声をかけられた。
学校は変わっても、お昼の定位置は変わっていない。
「うん、だいたいはね。現時点じゃ特にやりたいこともないから、総合大学に行こうと思う。指定校推薦で行けるとこ。受験代もばかになんないしね」
「いいなぁ。私は三葉と違って指定校受けられるほど成績良くないからなぁ。三葉と同じ大学行くには正規で受験せんと」
そう言いながらサヤちんは中身が半分ほど残っている弁当箱を膝の上に置いた。
私もサヤちんも以前から高校を卒業したら東京に出て行くと決めていた。けど特にやりたいことがあるわけじゃなく、ただ漠然と東京に行きたいという気持ちがあるだけだから、自分の成績で指定校推薦を受けられる総合大学にしようと考えていた。
昔から東京には憧れていたけど、今は「行きたい」というより「行かなきゃ」という想いが強い。
そんな気持ちになったのは、やっぱりあの日からかな。
「テッシーは?お父さんの知り合いの土建屋さんで働かせてもらえる話も出てるんでしょ?」
サヤちんが顔を膝の上にちょこんと乗せてテッシーにしゃべりかける。可愛い。
「わからん。本当は土建屋として糸守の良いところはそのままに、悪いところは改善してみんなが住みやすい町を作りたかったんやけど、今となっては糸守町もないしな」
テッシーは何だかんだ糸守町を愛していた。
私とサヤちんが町の悪口ばかり言ってるとよく怒られたし、「自分はずっとこの町にいるんだ」ってサヤちんに言っていたことも知っている。
だから多分町がなくなって一番ショックを受けているのはテッシー。
「じゃあさ、テッシーも一緒に東京行こうよ。東京楽しいよ?」
どうせ東京に行くなら3人一緒が良い。
今のテッシーに東京に行こうと言うのが良いのかわからなかったけど、私の口はついそう言ってしまった。
「俺はお前らみたいにミーハーじゃないんや。東京東京言ってられんわ」
「でもさ、サヤちんと離れ離れになっちゃうよ?それでもええん?」
「はぁ?」
テッシー困惑。
「ちょっと三葉何言っとるの?」
サヤちん顔赤。
「サヤちん可愛いから東京の大学行ったらきっとモテるよ?きっとサークルなんかに勧誘されてさ、カッコいい都会の先輩たちにチヤホヤされてさ、彼氏ができちゃって、もうテッシーには構ってくれなくなっちゃうよ?」
「三葉!そんなことテッシーには関係ないやろ!」
慌てて否定するサヤちん。
一方テッシーは。
「……」
急に黙り込んでしまった。おや?効果ありか?
「勘違いするなよ!彼氏ができたらとかはどうでもええけど、お前らみたいな田舎モンが東京の悪い奴らに騙されへんか見張っとくやつが必要やろ」
ビンゴ!やっぱりテッシーのサヤちんへの愛は偉大だった。
「何よ!あんただって田舎モンやろ!」
顔の赤みが取れないまま声を大にするサヤちん。その照れ隠しが友人の私には微笑ましい。
かくして私たち3人は1年後、東京に行くことを夢見て残りの高校生活を送ることになった。