JTBオアフ島、ハワイ島CMソング。
桑田さん、この曲ができる前からJTBのCMでハワイに行くことが決まっていたそう。
以下、ライナーノーツより
「普段なら、既に何曲か出来上がっている曲の中から、そのCMの主題歌になりそうなものを選ぶことが多いのだが、今回は何だかどうもしっくりこない」
と言うことで改めて作ったのが「オアシスと果樹園」。
であれば「オアシスと果樹園」と言うタイトルはハワイを意味すると考えてもとりあえずは良さそうです。
オアシスは砂漠において水が湧き出るところ、転じて疲れを癒してくれる場所。
ハワイは確かにそんな場所ですね。
また、果樹園としてのハワイは南国のフルーツが豊富。パイナップル、パパイヤ、マンゴー、グァバ、などなど。
JTBハワイ旅行のCMソングで「オアシスと果樹園」なんて爽やかなタイトルがついていればベタなハワイのラブソングをつい期待してしまいます。
常夏、海、砂浜、夕暮れを舞台装置に男女の恋物語が展開される、みたいな。
でも、桑田さんはいつだってリスナーや評論家の百歩先を行くアーティスト。
いい意味でこちらの期待を裏切ってくれます。
そして、今回も。
タイトルはハワイなのに、歌詞は全然ハワイじゃありません。
ハワイはまったくどこにも出てきません。
遥か旅路へ国際航路は
上へ上へと雲を掻き分けて
光一閃 空に虹を架けた
恋はブルーの便箋ひとつ
言葉言葉に愛をしたためて
こんな男が今も君を想う
熱い風が吹いていた
海が…海が待っている あゝ
愛の言葉も言えずに
All the way 生きて来たよ
Oh… 逢いたくて
好きだった女(ひと)
君の涙も知らずに
All the way 人生ずっと
どれほど悔やんだって
旅は続くのだろう
押され揉まれた満員電車を
降りる潮時やって来たんだな
今日の夕陽はどこに沈むのだろう?
風が通り過ぎてゆく
燃える…日々が去ってゆく あゝ
サヨナラさえも言えずに
All the way 恋は終わり
Oh… どうやって
償えばいい?
僕が出来ることはただ
Go your way 祈るだけ
Oh… もしかして
夢で逢えたらいいな
愛の言葉も知らずに
All the way 生きて来たよ
Oh… 逢いたくて
惚れ抜いた女(ひと)
君が営(や)るカフェテラスは
Far away 星降る里
Oh… 切なくて
振り向くこともある
新しい朝が来る
旅は続くのだろう
ハワイ行きの国際航路に乗り込んだのは「君」。私ではありません。
私はおそらく「満員電車を降りる潮時」(つまりは定年を迎える年齢)まで日本にいます。
だから私の歌にハワイは出てこない。
「君が営るカフェテラスはFar away(遠く離れて)」とありますが、それがハワイにあるなんてどこにも書いてません。
ただ「オアシスと果樹園」というタイトルとJTBのハワイ旅行CMソングだからハワイにいる「惚れ抜いた女」を想う歌だろうと勘繰るわけです。
そして、そうだとしたら、さすが桑田さん、ハワイを描かずしてハワイを描くという離れ技をやってのけたことになります。
それにしても「オアシスと果樹園」。
惚れ抜いた女を思い、満員電車を降りる年齢まで他の女の愛の言葉も知らずに生きて来た。まるで「栄光の男」を彷彿とさせますが、そんな男の人生を歌いこのタイトル。
まったく不似合いでオシャレで最高です。
マイナー調のロックナンバー。
なるほど雲を掻き分ける国際航路のようなスピード感はあります。
でも「オアシスと果樹園」のタイトルからイメージするキラキラのポップソングではありません。
愛の言葉を知らずに生きてきた男に相応しい曲調です。
詞も曲もリスナーの期待を高いレベルではぐらかす、ハワイらしくないハワイのためのナンバー。ぜひ聴いてみてください♪