1942年、鹿児島県の知覧町に特別攻撃隊員を養成する飛行学校ができました。

いわゆる特攻隊(ゼロ戦に乗り敵に体当たり攻撃をする部隊)の養成学校です。


富谷食堂は軍指定食堂となり、訓練生の憩いの場となりました。

食堂を営む鳥濱トメさんは、私財を投げ打ち食事を提供しました。死を約束された若者たちに、彼らが好きなものを食べさせたかったのです。


宮川三郎少尉も富屋食堂に出入りする若者の1人でした。

出撃前夜、1945年6月5日は彼の20歳の誕生日でした。

宮川少尉はトメさんに言います。

蛍になって帰ってくるから、店の正面の引き戸を開けておいてほしい…

次の日、彼は沖縄に向けて飛び立ちました。

一匹の蛍が店の表戸から入ってきたのはその夜のことです…



愛の歌が途絶えるように
心の灯りが消えたの
たった一度の人生を捧げて
さらば友よ 永遠(とわ)に眠れ

青空は悲しい空
揺れる木洩れ日がせつなくて
夏が来るたびあの日と同じ
風が通り過ぎて行ったよ

涙見せぬように
笑顔でサヨナラを
また逢うと約束をしたね

何のために己を断って
魂だけが帰り来るの?
闇に飛び交う蛍に連れられ
君が居た気がする

生まれ変われたなら
また恋もするでしょう
抱(いだ)き合い命燃やすように

涙見せぬように
笑顔でサヨナラを
夢溢る世の中であれと
祈り



映画「永遠の0」主題歌。

零式艦上戦闘機、いわゆるゼロ戦に乗り込む特別攻撃隊を描いた作品で、百田尚樹さんの同名小説が原作です。







サザンの「蛍」はタイトル、歌詞ともに冒頭に紹介した実話が基になっています。

日本人ならきっと知っている話だと思うし、知らなければなりません。

過ちを繰り返さないために。

桑田さんはいつかこの世に恒久の平和が訪れることを願い、サザンの発信力を使って歴史を伝えています。






聴きどころは桑田さんの情感あふれる歌声。

愛と平和をテーマにストリングスを多用したアルバム「葡萄」。

そのフィナーレを飾るに相応しいスローバラードです。