「東京VICTORY」はサザンの55枚目のシングルとして2014年9月10日にリリースされました。
キャッチコピーは「サザンオールスターズの、心高鳴る”アンセム”誕生ー」
アンセムとは国歌の意味、つまりは日本人が心をひとつにして歌える歌として作られたわけです。
「2020年に開催される東京オリンピック」がこの曲を作るきっかけになったそうです。

サッカーのワールドカップでよくオーオーと声を出して自国の代表を応援しますね。
ナショナリズムの高揚が表出するときですが、「東京VICTORY」のコーラスもまさにそれを意識したようです。

公式サイトには桑田さんのこんなメッセージが寄せられています。

「この『東京VICTORY』は、象徴的に『東京』という言葉を使っていますが『日本』や『ふるさと』を思って作った曲です。そのきっかけは2020年に開催される東京オリンピックでした。私たちが36年以上も音楽を作り続けてきた千駄ヶ谷ビクタースタジオのすぐ近くにある国立競技場が建て替えられることの寂しさや無常感。そして華やかなイベントのかげに隠れがちな、世の中が抱えているさまざまな問題。そういったことに目を向けると、どうしても気持ちも沈みがちになります。ですが、せっかく世界がひとつになる国際的なイベントが、わが国で開かれることが決まったのですから、そこに向けて、歌詞にもあるように“みんな頑張って”前を向いて行こうよ!というのがこの曲のテーマです。『いろいろ大変なこともあるだろうけど、みんなで未来へ向けて走り出そう!』と、曲を聴いてそんな気持ちになっていただけたら幸いです。」


時を駆けるよ Time goes round
変わりゆく My hometown
彗星(ほし)が流れるように
夢の未来へ Space goes round
友よ Forever young
みんな頑張って
それ行け Get the chance!!

果てしない空と
海の青さに
胸が騒ぐ

幸せ求めて
人は出逢い
愛を交わす

こんな争い事や
不安に満ちた世の中だけど

時を駆けるよ Time goes round
麗し My hometown
恋の花咲く都
回る 回るよ Space goes round
明日への Winning run
風になりたくて
翔び立て One more chance!!








ところで、桑田さんはこれまでサザン、ソロにおいて「東京」を度々タイトルに付しています。(「東京シャッフル」、「東京」、「東京VICTORY」)

18歳で上京以来、東京でいろいろな経験をし、変わりゆく街並みを目の当たりにされました。
人生で一番長く住まわれている「東京」に当然、思い入れがあるはずです。
また、日本を代表するミュージシャンとして国際都市である首都「東京」をタイトルに冠するのもよくわかります。
世界一の経済都市、ジャパニーズカルチャーの発信地としての「Tokyo」、「Japan」よりもHipな、ネームバリューのある「Tokyo」。
そんなTokyoでオリンピックが開催されるなら、歌うのは俺以外にはいない。
そのようにお考えになるのは当然のことでしょう。

しかし、私は桑田さんが「東京」をタイトルに付けることに違和感を覚えます。
桑田さんは茅ヶ崎の出身。
ジョギパンでテレビ初出演を飾った垢抜けない田舎っぺ。
それこそがサザン桑田のアイデンティティであり、だからこそ国民的存在になり得たのです。
私たちは、サザンが東京を代表することなど望んでいないのではないでしょうか。

「東京VICTORY」はアンセムです。
アンセムとはナショナル・アンセム、国歌であり全国民が等しく声を大にして、誇りを持って歌える歌でなけれはなりません。
地方出身者にとって東京は誇りではありません。
首都としてありとあらゆるものを独占する憎悪と羨望の対象でしかありません。
そして桑田さんは我々と同じ地方出身者。
「日本VICTORY」がタイトルとしてイマイチなのはわかります。クライアントから要請があったのかもしれません。
しかし、詩人桑田佳祐なら東京の記号抜きで東京を含む全国民の拠り所となるアンセムを書けたのではないでしょうか。

ちなみに「時が止まったままの あの日のmy hometown」は原発事故で帰宅困難地域になった福島(の一部)を指すそうです。


シングルだけあってメロディはキャッチー。
疾走感のあるドラミングが要となっています。
アルバム「葡萄」におけるキラーチューン。
ゴールドプレイの「Viva La Vida」の影響を受けたそうです。
どちらも素晴らしい曲ですね。