1945年のフランス映画「天井桟敷の人々」が曲名の由来ですが、モチーフは寺山修司主宰の劇団「天井桟敷」(てんじょうさじき)です。


天井桟敷とは劇場の最後方の天井に近い安価な席のことです。

演劇実験室を標榜した、いわゆるアングラを代表する劇団「天井棧敷」。

アンダーグラウンド(地下)演劇でありながら天井に近い=高いところを意味するネーミング。

その矛盾、二律背反がいかにも寺山修司らしいですね。


「素行のあまりよろしくない劇団の座長」をイメージして桑田さんは作詞をされたそうですが、寺山修司が実際そうだったのかはわかりません。

寺山修司は「天井棧敷」で見世物の復権を唱えました。

見世物といえば、例えば映画「グレーテスト・ショーマン」に登場するような、つい見ずにはいられない身体的特徴をもった人たちが芸を披露するものです。

「天井棧敷」のメンバー募集の広告には「怪優奇優侏儒巨人美少女募集」とありました。

いわゆる怪人の集まり「天井棧敷」を桑田さんなりにイメージし、膨らませ、詞を書き上げたのでしょう。



お前らいいかい
今夜は呑んじゃえ!!
朝日が昇るまで

笑えよ もっと
少女のように!!
肉体(からだ)中震わせて

マジでちょっとだけ
ムカついたオンナには
ヤツの頬っぺたを
張り倒してやろうかと
ハラハラ ドキドキ

踊ろよ セニョール
情熱のタンゴ
真赤な血が騒ぐ


ごめんよ 母さん
良い子でなくて
明日も旅に出る







私などは桑田さんのパフォーマンスにトム・ウェイツの影を見てしまいます。

トム・ウェイツは役者としても活躍していますが、男の悲哀を表現するペルソナにおいて彼以上のお手本はないかも知れません。

ソロの「グッバイ・ワルツ」以降、「青春番外地」、そしてこの「天井棧敷の怪人」と、トム・ウェイツ風ボートヴィルの一幕を観ているような気分になります。












1985年リリース、トム・ウェイツ8枚目のアルバム。最高傑作の呼び声高い。名曲「ダウンタウン・トレイン」収録。






1967年に出版された寺山修司の評論集。映画化もされた。装丁は横尾忠則。扇動的なタイトルも手伝い当時を象徴する一冊となった。