2002年10月15日、北朝鮮に拉致された5人の被害者が羽田空港に降り立ちました。
私はテレビに釘付けでした。
その瞬間がついに訪れたのです。

しかし、全員が帰国されたわけではありません。
日本政府が認定した拉致被害者は全部で17人。
つまり、12人はいまだ帰国されていないのです。
横田めぐみさんもその内のお一人です。

「Missing Persons」を含むアルバム「葡萄」がリリースされたのは2013年。5人の帰国から10年以上が経過した当時も、そして2024年5月現在も拉致問題は未解決のままです。


アカン!! 強引な交渉(マネ)は

話し合いはもっと冷静(おさえ)て
当然向こうもテンパってる
外交は焦れたら負けさ

相手の懐に飛び込んで
真の狙いが何か引き出そう


後が無いのは向こうさ
瀬戸際の状況さ
軽く握手を交わして
肝っ玉をワシ掴む

彼(アイツ)だって必死こいてやって来るんだ
家族愛と人間同士は変わらない


北風 激しい雨 孤独な夜に耐えて
絶望の海を越え 辿り着いた地の果て
愛しい人よ 今 逆転勝利へ






桑田さんは事件を風化させないためにこの問題を曲にしました。

同じく「葡萄」に収録され、シングルにもなった「ピースとハイライト」もそうですが、桑田さんの姿勢は対話重視の平和的解決を訴えています。

「歴史を照らし合わせて
助け合えたらいいじゃない
硬い拳を振り上げても
心開かない」

「色んな事情があるけどさ
知ろうよ 互いのイイところ!!」

(ピースとハイライト) 


このような桑田さんの意見にケチをつける輩が大勢います。
しかし、桑田さんはLove & Peace のロックに憧れ音楽を始めたミュージシャンです。
桑田さんの姿勢がそれに反するはずはありません。

それに、ミュージシャンが政治を歌うのは、その影響力を駆使して、大衆に問題意識を喚起するためです。
己の思想の喧伝や洗脳などハナから目的にしていません。
にもかかわらず、桑田さんのポリティカルナンバーにケチをつけるのはお門違いもいいところです。

サウンドは完成度の高いパワフルなハードロック。
歌詞に描かれた冷静な態度に反して、拉致への怒りを力強い音で叩きつけます。

「I call your name.
Megumi, Come back home to me.
She's coming back!!」


イントロのキーボードに続いてドラムとギターがキレのいいビートを刻みます。
日本語なのに英語の語感で歌う技ありのボーカル。
コーラスも効果的、サザンには珍しい長めのギターソロはいかにもハードロックのお手本です。

当時、サザンのメンバーは57-58歳。
この年齢でこのサウンド。
特に松田弘のパワードラムはこの曲の要となっています。
まだまだやるぞ!そんな意気込みが伝わってくるようです。