日本に「はっぴいえんど」と言うバンドがいたのはご存知でしょうか。

大瀧詠一、細野晴臣、松本隆、鈴木茂、そうそうたるメンバーを擁した日本のロックバンドでした。

1969年から1972年という短い活動期間ながら日本のロックの先駆けして、後続の指針となりました。

「旅の終わりがハッピーエンドなら いいのに」

と歌うこの曲のタイトルを「Happy End」でも「ハッピーエンド」でもなく「はっぴいえんど」としたのは、サザンが復活した2013年に、はっぴいえんどのメンバー、大瀧詠一さんがお亡くなりになったからです。

桑田さんは「風をあつめて」や大瀧さんのソロ「夢で逢えたら」をカバーしています。

サザンの一つ前の世代のトップランナー、大瀧詠一さんの死は桑田さんに少なからず衝撃を与えたことと思います。

大瀧詠一さんの功績に敬意を払い、桑田さんは彼のバンド名をタイトルに付しました。

また、ひらがな表記で「はっぴいえんど」というのも、桑田さんの照れとセンスの良さと優れたバランス感覚を表現するのにちょうどよかったのだと思います。


海街の風に揺れながら
キミは振り返り ボクに微笑みを
いつまでも 幼いふたりが
長い道のりを 駆けてきたね

時は流れ 互いの良いところ
駄目過ぎるところ 知り抜いて

旅の途中で羅針盤 キミに預けたら
船は何度も荒海越えて Oh…

夢と希望を五線譜に書き込んだら
土砂降りの雨降る 嵐の後で
昇る朝日がボサノヴァを歌っていた

言葉より そばに居て欲しい
眠れないボクの手を握りしめて
病む時も 笑顔見せてくれ
ボクよりも長く 生きるキミよ


出逢った日は 淹れたてのコーヒー
フラれた同士には ホロ苦く

旅の終わりがハッピーエンドなら いいのに
キミの顔色窺(うかが)いながら Oh…
決してひとりで生きて来れた訳じゃない
歌うことしかない 人生だけど
イカす仲間が奏でるは Love Song(「愛の歌」)





以下は、桑田さんのライナーノーツ「葡萄白書」より。

「果たして出来上がったこの歌を、照れ臭さを感じずに歌える日が来て良かったと素直に思う。私の音楽人生が果たしていつまで続くか分からないが、そうしょっちゅうも歌える類の歌でもないし、たまにはこういう曲も歌っておきたかったのだ。特に原さんに対しては、あらたまって「ありがとう」とはなかなか言い辛いから。」


アーティストの本心は作品の中にしかありません。作品を通じてしか表現できないからアーティストなのです。日頃から本心を口にすることができるのであれば、わざわざ手をかけて作品にする必要などないのです。

わたしがこのブログを書き始めたのも桑田さんの本心を作品から読み取ろうとしたことがきっかけでした。

インタビューの発言でさえ、桑田さんが本心を仰っているとは思えませんでした。

それはさておき、桑田さんは長年の感謝を込めて、この歌を原さんにプレゼントしました。

桑田さんによれば構想段階からエルトン・ジョンの『Your Song』のイメージがあった」そうです。

「Your Song」サビはこんな歌詞です。

My gift is my song and this one's for you

I hope you don't mind that I put down in words

How wonderful life is while you're in the world


贈り物は僕の歌 これは君に贈る歌

受け止めてほしい 言葉に込めた想いを

人生はなんて素敵なんだ 君がいる世界では


パートナーに語りかけるミディアムテンポのバラードという点で「はっぴいえんど」と「Your Song」は共通しています。

両曲ともストリングスをフィーチャーし細部にまで音の装飾が行き届いています。

改めて桑田さんの歌の上手さを思い知らされるナンバーです。

ところで、「昇る朝日」が歌っていた「ボサノヴァ」はサザンのデビューシングルになるはずだった「別れ話は最後に」です。

まさに桑田版ボサノヴァの傑作。

デビューアルバム「熱い胸さわぎ」収録。

「Your Song」と併せてぜひ聴いてみてください♪