武蔵「セイヤさん⭐︎、アレ観ました❓」
セイヤさん⭐︎「アレって❓」
武蔵「アレですよ、映画、歳とるとタイトルが出てこなくて。ほら、役所広司の」
セイヤさん⭐︎「Shall We Dance❓」
武蔵「それじゃなくて、新しいやつ」
セイヤさん⭐︎「PERFECT DAYSね」
武蔵「それそれ」
セイヤさん⭐︎「観たよ」
武蔵「いい映画ですよね」
セイヤさん⭐︎「まあね、なんか自分を観てるみたいだったけどね」
武蔵「いやいやいやいや、それって役所広司に失礼でしょう」
セイヤさん⭐︎「俺が役所広司に似てるってことじゃなくて、毎日同じことを繰り返してる様が似てるなって。俺、ひとりで飲みにも銭湯にも行くからさ。植物に水やりもするし」
そう言ってセイヤさん⭐︎は窓際の低い棚に並べてある自慢の盆栽コレクションを見やった。
武蔵「あの映画がヒットするのは必然だった、って観て思いましたね」
セイヤさん⭐︎「うん、最近、YouTubeで自分の日常を見せる動画多いもんね。それがウケるっていう。人の日常を覗き見るのって実は楽しいんだね」
武蔵「そうなんですよ。で、あの映画の最初は役所広司演じる平山のルーティンが淡々と描かれるんですよね。それをヴィム・ヴェンダースが撮るわけだから、そりゃみんな金払って見ますよ」
セイヤさん⭐︎「さらに言えば、平山は今流行りのミニマリストだよね」
武蔵「それもウケる要素のひとつですよね。カセットテープと本の所有はけっこうなもんだけどきちんと整理整頓されてて、それ以外の持ち物は必要最小限ですよね」
セイヤさん⭐︎「宣伝ポスターがミニマリストを象徴してるよね。布団敷いて電気スタンドの下で文庫本読んでるやつ」
武蔵「はい、それと着てる服がね、さりげないんだけど似合っててね。UNIQLOだと思いますけどね。最近のUNIQLOはデザインも洗練されて最強ですけど、YouTubeでよく大人の男のためのUNIQLOみたいな動画があるけど、役所広司の着こなしはそのお手本みたいでね、これもウケるポイントかなと」
セイヤさん⭐︎「そして音楽だよね。この緩やかな映画にロックを当てたのがまたヴェンダースのセンスの良さだよね」
武蔵「60〜70年代のさりげない名曲群ですよね。主題歌はルー・リードの同名曲『パーフェクト・デイズ』だけど、特にヴェルヴェット・アンダーグラウンドの『ペール・ブルー・アイズ』が好きです」
武蔵「それと、これは気づいた方がどれぐらいいらっしゃるか。平山が写真の現像でフィルムを出しにいくカメラ屋の店主役、あの方は英米文学の翻訳で有名な柴田元幸さんです」
セイヤさん⭐︎「へぇ。翻訳家がヴェンダースの映画に出るってすごいね」
武蔵「というわけで本日は以上となります」
セイヤさん⭐︎「おつかれ、武蔵さん、寿司
でも食べいこうか。おごるよ、株価が最高値を更新したし」
武蔵「その辺、平山っぽくないですよね…」
1972年リリース、ルーリードのセカンドソロアルバム。名曲「パーフェクト・デイ」、「ワイルドサイドを歩け」収録。プロデューサーはデヴィッド・ボウイ。
1969年リリース、ルーリード率いるヴェルヴェット・アンダーグラウンドのサードアルバム。聴きやすいのに商業主義ではない、バランスの取れた名盤。ヴェルヴェットの最初の1枚としてもオススメ。「ペールブルーアイズ」はこのアルバムに収録。






