危機議員たちのパラダイス

銭乞う日のアリバイ

バレるような折りは御苦労

俺はラッキー

知れずハッピー

いい暮らしと大枚抱いてノホホン

 




 

タイトルはそのものズバリ「政治家」。

桑田さんにしてはストレート過ぎるネーミングだが、これはクラプトンのバンド、クリームの「Politician(政治家)」に倣ったもの。

 

「政治家」収録のアルバム「Southern All Stars」のリリースは1990年。前年には戦後日本最大の贈収賄事件、リクルート事件があった。

 

値上がり確実なリクルート関連会社の株が政治家や官僚に譲渡され、私などはリクルートと聞けば「就職活動」ではなく、いまだにこの汚職事件を真っ先に思い浮かべる。

 

多くの大物政治家が、未公開株の入った「バレるような折り」を受け取り、「銭乞う日のアリバイ」もたたず、実際バレて、「危機議員」となった。

 

この曲は、なるほどリクルートに絡んだ政治家たちを批判しているのだろうが、結局のところ政治家とはこんなもんだろうという気がしないでもない。

 

政治批判がテーマとなれば、サウンドはフォークかと思いきや、桑田さんのバランス感覚が働き、なんとAORである。

複雑なコード進行、メロディやコーラスの被せ方にスティーリーダンの影響が色濃い。

 

「女のカッパ」、アルバム「Keisuke Kuwata」などスティーリーダンを意識するとき、桑田さんの作品は傑作となる。

両者とも完璧主義者と言う点で共通している。


 

AORの洗練からは程遠い政治家たちをAORのサウンドで撃つ。実はこれこそがミュージシャンならではの、言葉以上に辛辣な批判の手段なのかも知れない。