1986年4月5日リリース、KUWATA BANDのファースト・シングル。



BAN BAN BAN

One day wearin' so many wears, So many chapeaux, And so many ties.

君は緑の 風に乗る
吐息まじりの Good-Time
別れるために 出逢う二人に

夏は訪れる






サザンオールスターズでこの上ない成功をおさめた桑田は、「kamakura」リリース後、サザンの活動を休止し、KUWATA BANDを結成する。
このバンドで「『貧乏』をやりたかった」という桑田は、アティデュードにおいて原点回帰を目指すが、本人も述べているとおり所詮は「アマチュア・バンドごっこ」でしかなかった。
桑田が一流のミュージシャンを従えて曲を作り、歌うとなればKUWATA BANDを貧乏な新人バンドとみなすものなど誰もなく、「BAN BAN BAN」は資生堂のプローモーションソングに選ばれ、オリコン最高位3位を記録し、年間ベストテン第1位を獲得する。
サザンの大成功に過食気味だった桑田がハングリーさを求めて結成し、その結果、サザンを超えんとする成功をおさめたのは皮肉というべきか。

「BAN BAN BAN」のテーマは、桑田お得意のsummer heart breakであり、そのキャッチーなメロディとともに、ファンでもない限りサザンの曲と区別はつくまい。
それでも、これは「KUWATA BAND」の曲であり、注意深く聴くなら、このバンドが「ロック」というコンセプトに基づいてどのような音作りを目指したのかが見えてくる。

ギター、キーボード、パーカッションのアンサンブルがイントロを引き伸ばし、熱い期待に胸が高鳴る。雷鳴のごときドラムの連打に続き、ダイナミックな「BAN BAN BAN」のコーラスが切り込んでくる。
エコーをかけたボーカル、ヒロシのいつになくヘヴィな電子ドラムもロックの演出に欠かせぬ存在感を放っている。
イントロと同じメロディをアウトロで繰り返し、桑田のファルセットボイスがそよ風のように吹き抜ける幕引きには、爽やかな感動がある。

歌詞も素晴らしく、冒頭の「君は緑の 風に乗る」で曲のイメージを決定づけると、続く「別れるために 出逢う二人に夏は訪れる」で恋愛の本質を見事に言い当てる。
「瞳の中に 虹のかけらを 君は抱いていた」はレオン・ラッセルの「Rainbow In Your Eyes」→サザン「瞳の中にレインボウ」への言及であり、「My lonely hert's club band」と名曲のタイトルをさらりと滑り込ませるのも忘れない。

ジャケットには「緑」の中で戯れる「あの頃」の「二人」が、サザンのジャケットには決したなかった洒落たタッチで描かれている。

サザンの失恋ソングが、じめっとした哀しみを帯びているのに対して、「BAN BAN BAN」は失恋したにもかかわらず、カラッとした爽やかな印象が後に残る。
「じめっ」と「カラッ」。
実はそれこそが「サザンオールスターズ」と「KUWATA BAND」の違いであり、強引な言い方をすれば「日本」と(桑田が夢に描いた)「アメリカ」の違いなのかも知れない。

※参考文献 桑田佳祐「ブルー・ノート・スケール」
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