8thアルバム「kamakura」2枚目8曲目収録。


LPでは2枚目B面3曲目に収録。
この曲でもうひと暴れした後、大作「kamakura」は、いよいよ大団円へと向かう。

我の名は Cannon BallのGenious
闇を斬る高性能な Black Bird

夜の街に 声が響く
まるで止みそうにない 無情の Race

泣き濡れて さ迷うは People
君が乗る最新鋭の Monster

喉が渇く 武器が重い

お互に向き合う 異常な Space







「怪物くん」と聞くと藤子不二雄A氏のマンガを思い出すが、この曲にあの「怪物くん」は登場しない。

何やらおどろおどろしいSEではじまるが、「Cannon BallのGenious」、「Black Bird」と自称する戦闘機が「Thunder」のように「空駆ける」様子を、暴れ狂う巨大怪物のイメージになぞらえ、有名漫画に倣い「怪物君」と呼んでいる。

「開きっ放しのマッシュルーム」もそうだが、冷戦の只中にあった1985年において、核や戦争をアイロニカルに描くことで、桑田は国際社会の問題と向き合っていた。
しかし、冷戦が終わり、国際情勢が変化するに伴い、桑田の歌にも変化が見られるようになる。
例えば、1998年の「平和の琉歌」、2015年のアルバム「葡萄」に収録された「ピースとハイライト」、「平和の鐘が鳴る」、「蛍」などは単なる現実のアイロニカルな描写ではなく、平和を喚起するメッセージソングになっている。

桑田氏自身、歳を重ねたこともあるだろう。
私のような長いファンは、桑田氏のその変化を重く受け止め、氏に習い成熟しなければならないと思う。

まあ、何が言いたいかというと、一連のメッセージソングの萌芽は、「開きっ放し~」や「怪物君~」にあり、この頃、国際情勢にきちんと目を向けていたからこそメッセージソングの花が咲いたのだ。その意味において「蛍」とは「怪物君~」に登場する「Black Bird」の進化形であり、どちらも空を飛ぶ黒い創造物であることは偶然ではない。(いや、偶然か)

この曲のサウンドを高級レストランのメニュー風に表現するとしたら、「ポリス「シンクロニシティⅡ」同時代のハードロック仕立て」とでもなろうか。
1983年にリリースされたポリスの「シンクロニシティ」は当時の桑田のお気に入りであったが、氏は意外に(?)ハードロックもお好きである。レッド・ツェッペリン、ディープ・パープル、グランドファンク・レイルロードはAAAでカバーしてるし、さらには「V・ヘイレンてェバンドは俺も大好きちゃん大会であった」(桑田佳祐「ケースケランド」)とのことである。
その辺の影響をミックスし、デジタルサウンドを駆使して仕立て上げたのが「怪物君の空」のサウンドである。

演奏集団サザン・オールスターズのヘヴィな一面を耳の当りにすることができる。




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