新たなサマー・オブ・ラブ
現世のサマー・オブ・ラブはさんざん書き尽くした桑田さん。
その恋はついに彼岸と此岸の境界線を越えて逝きます。
盆ギリ盆ギリ
今は亡き人と
素敵な Lovely Night
姿は見えねぇけど
誰もがやってるよ〜
「こっち側の人間も、あっち側に逝かれた方達も、在りし日を偲びながら一緒に
過ごす『お盆』くらいは、どうせなら楽しんじゃった方がいいんじゃないかと・・・」(ライナーノーツより)
死者と生者が入り乱れ、飲めや歌えの大騒ぎ。逝った人と逝ってない人が共に交わり逝ってしまう。
サザンビーチや『Rocking On』が登場するけど(もっともここではロックインジャパンの主催者と性的なロックオンのダブルミーニングだが)舞台は「今際の際」。
「横浜」や「ブラウンヘアー」の面影遠く、老若男女のロックオンが展開します。
まさに歌詞中の「女と男の曼荼羅絵」に相応しい、汗まみれの匂い立つような混沌を描き、サザンの新しいサマー・オブ・ラブを桑田さんは提示してくれます。(第二弾があるかは不明ですが)
盆ギリ盆ギリ
夏は盆ギリ
ヨロシク Hold Me Tight
盆ギリ盆ギリ
今は亡き人と
素敵な Lovely Night
ギンギラギンギラ
踊る女と
男の曼陀羅絵
シッポリシッポリ
好きなあの子と
故郷(ふるさと)帰りゃんせ
ヤバない?怖ない?正気かい?
姿は見えねぇけど
誰もがやってるよ~
みんなに内緒だよ~
ちょいと
老若男女が熱い魂で
『Rocking On』で Show!!
もう一度死ぬまで
踊り明かすのさ
Uh Uh
ほいで
呑めや歌えの迎え送り火
宴は Oh What A Night!!
遠い... 夏の... 恋でした
音楽曼荼羅絵
アッパー系のサザンナンバー。
ライブでは「ホテル・カリフォルニア」や「艶色・THE NIGHT CLUB」や「ボディ・スペシャルII」に取って変わることでしょう。ここに「マンピー」を加えてもいいのですが、あれは曲の役割よりズラの役割が大きいのでライブでは今後も残るでしょう。
さて、死者と生者が入り乱れる歌世界にふさわしく、サウンドにも音楽曼荼羅絵とも言うべきアレンジが施されています。
サーフミュージックなイントロに始まり、ガムランのゴングの音、中東風のスキャットを重ね、桑田さん曰く「猥雑で『アジアン・テイスト』で『エスニック・フレーバー』な歌謡曲」に仕上がっています。
これぞサザン!の期待に添いつつ、これまでにないサウンドを聴かせてくれる「THANK YOU SO MUCH」。
アルバム全体のサウンドコンセプトを象徴するようなナンバーではないでしょうか。
死霊の盆踊り
「死霊の盆踊り」という映画があります。
1965年のアメリカ映画、日本での公開は1987年。原題は「ORGY OF THE DEAD」。直訳すれば、「死者たちの乱行パーティ」
ストーリーは、墓場で死霊に捕まったカップルが女たちの裸踊りを見せつけられる、というまあ半分ポルノ映画なんだと思います。
観てはないのですが、まだ若かったころレンタルビデオ屋に置いてありました。
学校帰りに友達と立ち寄り、裸の女の霊が踊るそのパッケージを手に取っては「お前借りろよ」「やだよ」なんて言い合っていたのを覚えています。毎日のように立ち寄るくせにただの暇つぶしでろくに借りもしないから店員に煙たがられ、ある日「それオススメ!借りてけ!」と声をかけられました。中坊に「死霊の盆踊り」をすすめるとは店員さん、相当いらだっていたんでしょうね!
果たして桑田さんがこの映画をご覧になり、「盆ギリ恋歌」のインスピレーションになったのかはわかりません。
ただ、この曲を聴いたりPVを観ていて、ふいに思い出した次第です。