昭和11年(1936)作。連作「魚と降誕祭」より。

降誕祭は、12月25日、キリストの誕生日である。クリスマス、聖誕節、聖夜とも。

魚はキリスト教の象徴とされた。

 聖夜、遠くから鐘が聞えてくる。家の硝子の水槽には、魚が飼われている。信者の家庭を描いている。


 東方の聖き星凍て魚ひかる

 聖き魚はなびらさむき卓に生く

 円光も燭(ひ)もみじろがね魚ねむる

 聖き書(ふみ)外(と)よりも黒く魚と在り

 

連作「あきかぜ」より。昭和15年(1935)、三鬼35歳、俳句をはじめて3年目。


秋風に吹かれている背の高い草。その向うに見える白い塔。

白い塔は、何かを象徴しているようだ。


貝殻のみちなり黒き寡婦にあふ

ほそき靴貝殻をふむ音あゆむ

風とゆく白犬寡婦をはなれざり

砂白く寡婦のぱらそる小さけれ

 連作「アヴェ・マリア」の続き。

 燭寒し屍にすがる聖母の図

  <聖燭祭工人ヨセフ我が愛す>の句を受けて、処刑されたキリストの亡骸にすがるマリアに焦点をあてた。「屍にすがる」と子の死に慟哭する、生身のマリアを描いている。

 聖燭祭妊まぬ夫人をとめさび

 咳(しはぶ)きて神父女人のごとやさし

 聖燭祭娶らぬ教師老ひ(ママ)にける