ずっと考えていたことがある。 

「彼の中で、俺の優先順位はどの位置にあるのだろうか」 


別に「仕事と私、どっちが大事なの!?」といった使い古されたセリフを吐くつもりはない。もとよりそこの比較はしていない。 


彼が忙しいことは重々わかっている。 

だからこそ、忙しさの合間、彼にできた “自由な時間” をどのように使うのか。それこそが優先順位なんだと考えている。 


そして、さらに考えてしまう。 

複数人で集まったとき、話したいと思う相手は? 

仕事が休みのとき、一緒に遊びたいと思う相手は? 


告白をする前も、後も。 

もっと言うなれば、「少しずつ関係を築いていきたい」と言われる前も、後も。 


俺から話しかけないと、彼から話しかけてくることはない。 

俺から遊びに誘わないと、彼から誘ってくることはない。 


考えすぎかもしれない。杞憂かもしれない。記憶違いかもしれない。 


もちろん全てにおいて、いついかなるときも自分が優先順位一位でいたいだなんて、そんなおこがましいことは考えていない。 

ただ、彼が誰かの顔を思い浮かべるとき、そこに自分の存在があって欲しい、その程度の望みだ。 

だが、それすらも叶っているのかどうか。 


前の記事でも書いたが、休日にLINEの返事が来ないことがままある。数日間、返事が来ない。それは別に良い。 


「疲れが溜まると“返事”をする気力がなくなる」というタイプがいることも知っている。彼もきっとそうなんだろう。 


ゆっくり休めているならそれで良い。その妨げになるようなら、返事なんてなくても良い。

いつものように、また平日朝に返してくれれば良い。 


もしくは、趣味や遊びでしっかりリフレッシュしているのかもしれない。 

俺だって、旅行に行ったり誰かと遊んだりしていれば、返事ができないことがある。それは仕方ない。 


理由なんていくらでもある。 

別に返事が来なくたって良い。 

そう思っていた。思っていたのに。 


とある日曜日の、彼のSNSの投稿。 

「たった今アプリでやり取りしてる人と、たまたま同じ場所にいることが分かって笑った」 


なにかが崩れる音がした。 

ああ、そうか。
俺には返事しないのに、アプリ上でのやり取りはしているんだ。 


今まで自分を納得させてきた、あらゆる理由が崩れていく。 

彼を想う気持ちとともに、彼を信じる気持ちとともに。 

積み重ねてきたものがすべて崩れていく。 


きっとこれは防衛本能だ。 

これ以上自分が傷つかないための、防衛本能。彼に対する恋心がすっと消えていく。驚くほどあっという間に。 


たったこれだけのこと。 

でもきっと、俺にとってはとても大きなことだったんだろう。 


悲しくはない。寂しくはない。苦しくはない。 

嘆きも、憤りも、怒りもない。 


完全に “無” だった。俺は彼に対するあらゆる感情を失った。