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それからしばらくして。この旅館に三人のお供を引き連れた男がやって来た。そしてある従業員に写真を突き付けた。
「こいつを探している」
あの女だった。もちろん「知らない」と答えて追い返した。しかし小さな温泉街、きっとわかってしまうに違いない。そう考えた女将は方々に手を尽くして女を守った。
しかし女は恐怖で精神が参ってしまった。あんなに明るかったのにほとんど口を聞こうとしない。女将は心配したが、女は大丈夫と言うばかり。
ある日、定時になっても女が出勤して来ない。電話にも出ないし、部屋にもいない。
結局どうにもならないので無断欠勤という事にしてしまった。ところが。
「大変、女将さん大変よ!」
何事か、従業員に連れられて向かったとこは風呂場だった。そこに彼女はいた。窓の外、向かって右に立つ大きな松の枝に首を吊っていた。急いで降ろしてやったがすでに死んでいた。
悲しい事に、おそらく女は死ぬ前に髪を洗っていたようだ。自慢のタネだったのだろう。まだシャンプーの匂いが漂っていた。不吉だという事でその松は切り倒された。
髪の巻き付いた長いロープと一緒に寺で燃やして貰った。
「・・・それで彼女がぶら下がっていた場所というのが、お客さんが、その『何か』をご覧になった場所だったんです」
女将さんはそう言いながら母の目をみつめていた。
終わり
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今回のお話も涼んでいただけましたか?
それではまた来週…
(^-^)/
これから地元の花火大会なので行ってきま~す
