新緑の眩しい季節になりました
朝晩はヒンヤリしていても
日中はポカポカあたたか
美味しいものをモリモリ食べたくなっちゃいます
今日はお話を
おとうさんはドラキュラ！・・・ではなかった
このごろやす君は元気がありません
休み時間にヒロ君がさそっても
テンションが低いのです
「なんだよぅ どうしたんだよぅ あそぼうぜ～」
「おまえ、これ、知ってる？」
やす君は一冊の本をヒロ君に見せました
「あっ、知ってる ドラキュラ おれもよんだ」
「これ、うちのおとうさんなんだ」
「うん？
てんかいが早すぎて何言ってんのか
わからないんですけど・・・」
「このあいだ どしゃぶりの日あったじゃん」
「うん、カミナリがすごかったね おれ、こわくて
なかなかねれなかった」
「うん、こわかった おれ夜中に目がさめてさ
トイレに行こうとしたら おとうさんがちょうど
玄関から出た所で、”ピカッ”って光ったんだ
すぐドアが閉まったから一瞬しか見えなかったけど
おとうさん黒いマント着てた」
「なんで？」
「しらないよ 土砂降りだよ！夜中だよ！」
ヒロ君は息をのんでやす君を見つめた
「うちのおとうさんってさ、昼間はいつもねてるんだ
夕方におきて来るからおれがねるまでのちょっとしか
会えないんだ」
「でも・・・でもさ・・・でもね ドラキュラって・・・」
「だって夕方になるとうちのまわりにコウモリが
飛びまわるんだよ」
「いやそれはうちもそうだよ」
「どうしよう、大きくなったらおれドラキュラに
なっちゃう」
「じゃあさ、おれ、今日とまりに行くよ
そんでおばちゃんに聞いてみよう」
ヒロ君が大きなリュックを背負ってとまりに来ました
これ、やすの分と言ってわりばしで作った
十字架をわたすと
リュックをさかさまにしてゴロゴロとニンニクや
たまねぎ、ジャガイモをぶちまけました
やす君はおどろいて
「ニンニクはわかるけど なんでたまねぎとじゃがいも？」
「うちのなやにいっしょにおいてあったから
だから、こいつらは仲間なんだ」
「仲間？」
「とにかくボケットに入れて」
二人はニンニク、たまねぎ、じゃがいもを入るだけ
つめこんで、わりばし十字架をにぎりしめて
おかあさんのところに行きました
「おばちゃん！おばちゃんもドラキュラなんですか？」
「えっ？なに？なんのこと？」
ぼっぺたを赤くして、はなの穴おっぴろげてる
ヒロ君がかわいくてやす君のおかあさんは
笑いをこらえています
ヒロ君のうしろにかくれていたやす君も
前に出て来て
「ぼく見たんだ！」
ぼく？いつもおれって言ってんのに家では
僕って言うんだ・・・と思ったけどそんなことよりも
ヒロ君はやす君から聞いたことを一通り話しました
おかあさんはふぅーーーと長い息をはいて
顔をおとして
「そう・・・見てしまったのね・・・
とうとう本当のことを話す時が来たのね・・・
二人とも、こっちへいらっしゃい・・・」
二人をイスにすわらせると
カーテンをすこし乱暴に
シャーッ、シャーッと閉めました
「な、なんでくらくするの？」
二人はわりばし十字架をおでこのあたりで
にぎりしめています
それからおかあさんは引き出しから
懐中電灯を出して自分の顔を下から照らしました
「二人とも、よ～く聞くんだよ
いいかい？」
「はい！！」
「おとうさんはねぇ～
おとうさんは・・・しんぶんやさんだぁ～」
「キャ～！ キャ～！
キャ・・・え？しんぶんやさん？」
「そうです
おとうさんはしんぶんやさんだから
夜おそくに仕事に行って、朝に帰って
来ます 雨の日はレインコートを着て行きます
マントではありませ～ん」
おかあさんはカーテンをシャ～っと
やさしく開けました
明るくなった台所でヒロ君は
「これ うちのおかあさんが
もっていきなさい・・・って・・・」
と言いながらポケットから ニンニク
たまねぎ、じゃがいもたちを出して
テーブルの上にならべました
そんなことがあったので
ハロウィンでは
ドラキュラにふんしたやす君
そのよこには
むりやりニンニクのコスプレをさせられた
ヒロ君が立っていました
おしまい