障がい者の就労に係る課題解決策の一つとして
一般就労でも福祉的就労でもない、第三の雇用の場に
現在欧州で発展しているソーシャルファーム

Social Firm:社会的企業)があります。

ソーシャルファームとは
障がい者(就労弱者を含む)をはじめとした
多様性のある人の雇用を多数(3割以上)実現することを
前提とした事業運営システムの下、
民間企業の経営手法を用いて運営する組織体です。
期待されるのは以下です。

(1) 税金の負担を少なくしつつ、
福祉就労でも一般就労でもない障がい者雇用の場を増やせる。
(2) 障がい者特性に適応した作業システムや作業環境を構築することで
障がい者の雇用が拡大できる。
(3) 生活できる賃金を障がい者にもたらすことができる。
(4) 障がい者と健常者が一緒に働くことで
障がい者が働く喜びと技能・専門能力を修得できる場となる。
(5) 障がい者が仕事を通じて社会と接することで、

社会参加の促進を達成できる。

カギとなるのは地域との連携です。
高度な技術や専門性をもった個人や会社の協力、
民間企業の遊休工場や店舗など設備・施設の貸与による事業化、
専門性(得意の能力)を持つ地域の福祉施設や地場企業が連携しての
共同事業などが考えられます。

農家なども含め後継者がいない等の理由で
廃業を余儀なくされている事業所も多いため、
遊休資産と労働力を結びつけることによって、
ソーシャルファームとして新たな事業展開の可能性が広がります。

ではどのような産業分野が
ソーシャルファームに適しているか、ですが
機械化・自動化が困難であったり
人的作業によって付加価値の高いものが最も有望視されています。

他県の事例を研究しました。

今回私が注目したのは福岡県の株式会社障がい者つくし更生会です。
http://www.csf.ne.jp/~tukusi-2/

この会社は行政から廃棄物処理4施設の運営を委託されています。
持込時に5分別のものを68 種類に分別するという
高いリサイクル率・再資源化率が、処理機の負担を軽減し、
地域のごみ埋立地が15 年も延命するなどの相乗効果をもたらしています。

また、資格取得など障がい者の教育にも力を入れており、
多様な障がいを抱えた職員が班長として
運営の中核的存在となって就労しています。

運営委託であれば人件費等の事業所経費を
委託費から賄えるため
現福祉制度上の事業者とならなくとも経営が成り立ちます。
環境への配慮、行政の設備投資費の削減、
障がい者の雇用の安定につながります。


八千代市内の障がい者数は、障がい者手帳所持数から
・身体障害:4,486人(18歳以上が4,380人、18歳未満が106人)
・知的障害:817人(18歳以上は503人、18歳未満は314人)
*いずれも平成22年4月1日現在
・精神障害:647人
*平成22年3月31日現在
となっており、総人口19万人に対し年々増加傾向にあります。

障がい者を支える家族のためにも
ソーシャルファーム実現に向けた制度整備が必要です。

一定の条件で障がい者を雇用した事業所への財政補助、
税制優遇などはもちろんですが
ソーシャルファームは補助金に頼らない自主経営を柱とする組織体ですので
行政と対等な立場になるよう競争力もつける必要があります。

要求仕様の達成率と低コストで競争入札に至らず
行政と随意契約を結ぶことに成功した
(株)障がい者つくし更生会に学ぶことは大きいです。

ソーシャルファームが認知され、
障がい者等の就労困難者と健常者が分け隔てなく
対等な立場で、主体性をもって働くことができる場が増え
事業所のあり方、行政の在り方を再考する一助になれば幸甚です。