





「はてさて、どこに行こう?」
虫たちがまっくらな森の中をあるいていると、なにやらむこうの木のところでピカピカした光をみつけました。
「あの光はいったいなんだろう?」
虫たちはおそるおそるちかづいていくと、ゲンジボタルたちが数ひきあつまってはなしをしていました。
「ぼくたち…あと何日ぐらい生きていられるんだろう?」
「ぼくは5日前に成虫になったから、あと10日ぐらいだな。」
「ぼくたち、たまごから成虫になるまで一年もかかるのに成虫になったら、あっというまに死んでしまって、何にも思い出なんかない。」
「そんなのかなしいね。」
「ながいたまごせいかつの時にたのしめるものがあったら、こんなかなしいきもちにならないのに…。」
それをきいていた音がくたいたちは「ピン‼︎」とひらめきました。
「ねえ、ゲンジボタルさんたち。ぼくたちの音がくをきけばかなしいきもちなんかすぐになくなるよ。」
そういうと、えんそうをはじめました。
はじめはびっくりしていたゲンジボタルたちも、だんだんとたのしくなり、おしりをピカピカひからせておどりだしました。
空がだんだんとあかるくなってくるとゲンジボタルたちはいいました。
「とってもたのしかったよ!ありがとう。そこできみたちにおねがいがあるんだけど……。きいてもらえるかな?」
「いいよ。はなしてみて。」
ウマオイがこたえました。
「きみたちの音がくはすばらしい。だからぜひともぼくたちの子どもにきかせてあげたいんだ。」
「もちろんですよ。ぜひぼくたちの音がくをきいてもらいたい。その子たちはどこにいるんですか?」
「それじゃあ、すぐに子どもたちのところにおつれします。ついてきてください。」
音がくたいの虫たちは
「はて?どこにいくんだろう?」
とおもいながら、前をいくゲンジボタルたちをみました。
「さあ、みなさん。ぼくたちの子どもたちがいるところです。」
「えっ。川の中?」
「ええ。そうです。ゲンジボタルのたまごは川の中なのです。さあ、みなさん、川の中に入って。ちょっとつめたいけどすぐになれますよ。さあさあ、はやく、はやく。」
「ちょ、ちょっとまってよ。水の中になんて入ったら、ぼくたち死んじゃうよ。」
キリギリスがさけびます。
「そうか…。水の中に入れないんですね。ざんねんだな。せっかくたまごたちにたのしい音がくをきかせてあげられると思ったのに…。」
「ごめんなさ~い」
音がくたいの虫たちは、あわててにげだしました。
「ゲンジボタルさんにわるいことしちゃったかな…。でも、水の中じゃむりだもの。」
マツムシがすまなそうにいうと、みんなでトボトボとあるいていきました。






