大都市制度をテーマとした全10回の連載記事「神奈川の『大都市制度』問題、制度論の前に私たちが向き合うべきリアル」を、無事に完結することができました。ご一読いただいた皆様、誠にありがとうございました。
当初は、大学生をはじめとする若い世代とともに大都市制度についての議論を深めることで、新しい視点や成果が得られるのではないかと期待しておりました。しかし、実際に学生たちと対話を重ねる中で見えてきたのは、彼らの関心が国政に向かいやすく、身近で重要な地方自治や大都市制度には十分な関心が向きにくいという現状でした。大都市制度そのものが一部の専門家や政治家以外には親しみにくいテーマであることも痛感いたしました。だからこそ今後は、この問題の認知度を高め、より多くの方に関心を持っていただく取り組みが不可欠であると考えております。
今回の連載を通じて神奈川県と横浜市の関係性を改めて考察する中で、横浜市においては特別自治市などの新たな枠組みを目指す以前に、足元で取り組むべき課題が未だ多く存在することが明確になりました。とりわけ、区役所の権限強化や、自治体間・組織間の人材交流の活発化といった実質的な改革が必要です。
一方、神奈川県の役割に目を向けると、県は戦前から横浜市・川崎市・相模原市という3つの政令指定都市へ重点的に大規模投資を行ってきた歴史があります。しかしこれからの時代は、3政令市以外の県内市町村に対しても適切な投資を行い、県全体としてバランスの取れた発展を果たしていかなければなりません。同時に、大都市の発展を陰で支えてきた周辺地域の存在や貢献を決して忘れてはならないと考えます。
仮に3つの政令指定都市があらゆる面で100%自己完結できるのであれば問題はありません。しかし、食料や水資源をはじめ、生活基盤の多くを他地域に依存している以上、単独での完結は不可能です。だからこそ、多様な自治体と広域的に連携し、互いに調和しながら共生していく姿勢が不可欠となります。
また、私個人の見解として、今後はAIの発達等により、現在の県と市町村による「二層制」のあり方が変化し、よりシームレスな「一層制」へと移行していくのではないかと考えております。既存の「大都市制度」という枠組みにとらわれず、時代の変化に即した自治体・市町村のあり方が徐々に形成されていくのではないでしょうか。
私たちが真剣に向き合うべき根幹の問いは、「持続可能な社会、そして持続可能な地方自治をいかに築いていくか」という点に集約されます。そのためには、住民の皆様が今後も変わらず質の高い行政サービスを受け続けられる環境をしっかりと維持・保障していく必要があります。
大都市制度という複雑なテーマゆえに試行錯誤の連続でしたが、本連載で提起した内容が、今後の政策推進や神奈川の地方自治の将来に向けた建設的なヒントとなれば幸いです。
【第8回】市境の「壁」・区の予算格差・人口減少時代の地方自治
