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健康診断で血糖値の数値が少し気になりはじめた、ご家族に糖尿病の方がいて将来が心配、最近食後に強い眠気を感じるようになった——。そんなとき、多くの方がまず「甘いものをやめなくては」と考えます。けれども、いざ我慢を始めても続かなかったり、ストレスでかえって食欲が乱れたりして、思うように整わないという声をよくいただきます。
実は血糖値というのは、口に入れる甘さの量だけで決まるものではありません。体の中でどのように糖が処理され、どのように運ばれ、どのように使われていくか。そのすべてに、内臓・自律神経・睡眠・筋肉・ストレスといった、いくつもの要素が関わっています。今日は「甘いものをやめる前に」整えておきたい、糖を扱える体の土台についてやさしくお話ししていきます。
■ 血糖値はなぜ上がりやすくなるのか
血糖値が上がる仕組みを少しだけ整理します。食事から取り込まれた糖は、すい臓から出るインスリンというホルモンの働きで、全身の細胞に運ばれてエネルギーとして使われていきます。ところが、
・筋肉量が少なく、糖の受け皿が小さい ・おなかの冷えを感じやすく、消化の働きが落ちている ・自律神経が乱れてホルモン分泌が不安定になっている ・睡眠が浅く、ストレスホルモンが下がりきらない ・食事のリズムが乱れていて、食事と食事の間隔がバラバラ
こうした条件が重なると、同じ量の糖を食べても、血糖値の上がり方や下がり方には大きな違いが出てきます。つまり「甘いもの=悪」と単純化して考えるよりも、糖をきちんと処理できる体に整えていくほうが、結果的に血糖値は落ち着きやすくなる、という見方ができます。
東洋医学では、消化と吸収を司る働きを「脾」のはたらきとしてとらえ、糖代謝に関わる感情のゆらぎや自律神経のリズムは「肝」の働きと結びつけて考えます。脾が弱ると甘いものへの欲求が強くなり、肝が高ぶると過食やどか食いが出やすくなる、と昔から言われてきました。現代の言葉に置き換えると、消化機能の低下と、ストレスによる食欲コントロールの乱れ、ということになります。
■ 「甘いものを断てば下がる」とは限らない、よくある誤解
血糖値が気になる方によくある誤解を、いくつか整理しておきます。
一つ目は、甘いものさえ我慢すれば数値は安定する、という考え方です。たしかに過剰な糖の摂取は影響しますが、糖質を極端に減らしても、ストレスや睡眠不足が続いている状態では数値は思うように落ち着きません。むしろ我慢のストレスが、数値を押し上げる方向に働いてしまうこともあります。
二つ目は、運動さえしていれば大丈夫、という考え方です。運動はとても大切ですが、おなかが冷えて消化の働きが落ちたままでは、せっかく動いてもエネルギーがうまく回りません。
三つ目は、痩せている人は安心、という考え方です。体型がスリムでも、筋肉量が少なく糖の受け皿が小さい方は意外と多くいらっしゃいます。「隠れ高血糖」と呼ばれることもあり、見た目だけでは判断できないところがあります。
ですから、まず取り組んでいただきたいのは、糖を引き算することよりも、糖を扱える体に整えていくことです。これが、甘いものをやめる前に見直しておきたい「土台」のお話です。
■ 今日からできるセルフケア
血糖値を意識し始めたばかりの方に、まず試していただきたいセルフケアをいくつかご紹介します。どれも特別な道具はいりません。
食事の順番を整える 野菜や海藻、きのこ、たんぱく質(魚・肉・卵・大豆)を先に食べ、ご飯やパン、麺類などの主食は後半に回します。同じ食事内容でも、食後の血糖値の上がり方がゆるやかになりやすいことが知られています。
たんぱく質を毎食少し意識する 血糖値が気になると、どうしても糖質を減らすことばかりに意識が向きます。けれども、魚・肉・卵・大豆製品などのたんぱく質が不足していると、筋肉の材料が足りず、糖を受け止める土台も弱くなりやすくなります。毎食、手のひら一枚分くらいのたんぱく質を意識するだけでも、食後の満足感が変わってきます。糖を減らすのではなく、たんぱく質と食物繊維を足す、という発想で食卓を見直してみてください。
おなかを冷やさない 冷たい飲み物のとりすぎや、薄着でのおなかの冷えは、消化の働きを落として代謝を鈍らせやすくなります。常温以上の飲み物を選ぶ、腹巻きを使う、湯船にゆっくり浸かる。当たり前に思えるこうした習慣が、糖を扱える体の土台になります。
食後15分の軽い歩き 食後すぐに座り続けると、血糖値の高い時間が長く続きやすくなります。お皿を洗いがてら家のなかを歩き回るだけでも違ってきます。本格的な運動でなくて構いません。「動きながら片づける」くらいの感覚で十分です。
夜の食事を軽くする 夜遅い時間の食事は、寝ている間も血糖値を高い状態に保ちやすくします。可能な範囲で、夕食はやや軽めに、寝る2〜3時間前までに済ませることを意識してみてください。
まずは6〜7時間を目安に睡眠時間を確保する 睡眠不足は、翌日の血糖値の上がり方を強めることが分かっています。必要な睡眠時間には個人差がありますが、まずは6〜7時間を目安に、自分にとって心地よい長さを探してみてください。「眠ること」はそれだけで立派な血糖ケアです。難しい日は、せめて寝る前のスマホ時間を短くするだけでも違います。
甘いものとのつき合い方を変える 完全にやめる必要はありません。空腹時に単独で食べるのではなく、食後のお楽しみとして少量味わうほうが、血糖値の波がゆるやかになりやすくなります。我慢ではなく、付き合い方を変える、という発想がおすすめです。
これらは一度にすべてやろうとせず、できそうな一つから始めるのがコツです。続くことのほうが、完璧さよりずっと大切です。
■ それでも変化が乏しいときは
二週間ほど生活の見直しを続けても、食後の強い眠気がとれない、だるさが抜けない、甘いものへの欲求が落ち着かない、健康診断の数値が気になり続ける——そんなときは、糖を扱える体の土台に何らかの偏りが残っていることが多くあります。
当院では、血糖値そのものを直接下げるための施術ではなく、糖代謝に関わる内臓の働き、自律神経のバランス、姿勢や呼吸、筋肉の状態を、東洋医学・カイロプラクティック・分子栄養学の視点から総合的に見立てていきます。初診ではおよそ90分の時間をいただき、お体の状態と生活背景を丁寧にうかがったうえで、お一人おひとりに合わせた方針をお伝えするようにしています。
医療機関での検査や治療が必要な段階と、生活と体の土台を整えていけば落ち着いていく段階とでは、対応の入り口が変わります。健康診断の結果用紙やお薬手帳がありましたら、お持ちいただけるとより丁寧にお話ができます。
■ 最後に
血糖値が気になりはじめた時期は、生活を見直すよいきっかけでもあります。甘いものを我慢することばかりに目を向けると、心も食事も窮屈になりがちです。けれども、糖を扱える体を整える、という発想に切り替えると、食事も運動も睡眠もぜんぶがつながった「自分を大切にする時間」になっていきます。
無理なく、けれどしっかりと。気になることがありましたら、いつでもご相談ください。
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