テレビCMの秒数からYouTUBE買収まで | 青空広告社

テレビCMの秒数からYouTUBE買収まで

世の中のテレビCMは大別すると15秒と30秒に分けられる。もちろん、60秒や90秒のテレビCMも存在するけれど、あまり見る機会はないんじゃないかな。

圧倒的に見る機会が多いのが15秒CM。これは日本のテレビ局が儲かるような構造となっている。大雑把に言うと、CMをなるべく細切れにしてセールスすることで、利益を出そうという仕組み。これにより日本のテレビのスポットCM市場は世界でも稀にみる規模で成長することになった。

15秒CMはとにかく尺が短いのでインパクト重視なCMがどうしても多くなる。そこにはブランドメッセージをこめるよりは商品名や企業名を覚えてもらうのが精一杯。一方で30秒CMはブランドのメッセージを少しでも詰め込めるように配慮されることが多い。

世界のCMに目を移すと、15秒CMよりは30秒、60秒CMが主流で、きちんとブランドメッセージを伝えるコミュニケーションが目立ってくる。日本の企業は競って15秒CMばかり作るものだから、世界のCMフェスティバルではなかなか入賞できない。商品名をやっきになって覚えてもらうCMなんて、クリエイティブとしては面白みに欠けるからだろう。

また、メディアプランの世界では、この15秒と30秒のCMをどの程度ミックスさせるのがいいのか、という議論がメディアプランの世界にある。商品名も覚えてもらわなければいけない、でもブランドの理解もしてもらわなければいけない、、、でも30秒CMのコストは15秒の2倍だし、CM枠もそんなに簡単に確保できるものではない。さらにいえば、クリエイティブ次第で、配分なんか無関係に、ブランドは認知・理解されるものだ、という身も蓋もない意見も飛び交う。

ビデオリサーチの独自調査によると、この15秒・30秒ミックス問題は、どちらかに完全に偏ってしまってはダメで、基本15秒をプランに据えて、30秒をほどほどに。。。という曖昧な結論に終始している。

このような15・30秒問題に終止符を打つくらいに、オドロキなニュースが先日のGoogleがYou TUBEを買収した一件だ。動画投稿型のYouTUBE上には権利をまるっきり無視して、世界中のCMが閲覧できる。そこに秒数の解釈はなく、おもしろければ、15秒でも、1分でも3分でも見るし、逆につまらなければ、まるっきり相手にされることはない。それでも話題にさえなれば、世界中から視聴される広告となる。

ペプシコーラにメントスを入れると発砲したペプシの中身がロケットのように噴射して、ボトルが注を舞う、なんていうくだらない映像なんかがYouTUBEにあるのだけれど、サイトでものすごい話題をよんで、メントスの売上が増大した、なんていうニュースも最近耳にした。

既存のテレビ広告モデルを完全に無視したYouTUBEに新たな広告市場が創造できるのか。

Googleは少し前の楽天がテレビを凌駕しようとしたのとは、まったく別のアプローチで世界のテレビCMの市場を覆す可能性を手に入れたのだと思う。マイクロソフトやその他のIT企業、メディア企業にYouTUBEが買収されてしまう前に、YouTUBE買収でGoogleが支払った16億ドルは決して高くない買い物なのかもしれない。

常に新しいコミュニケーションを求める企業・広告会社にとって、15秒や30秒のCMミックスの最適化より、YouTUBEの賢い使い方を考えていく方が、この業界においてもっと生産的な作業なのかもしれない。