中学3年になる直前の春休みに、飛騨高山方面に電車に乗って出掛けました。

山に入って凍死しようという目的です。


4月初旬のその辺りは、まだ雪が残っています。

しかし、凍死出来る程、夜間に気温が下がるかどうかわかりません。

とにかく、あまり苦しまずに死のうとしました。

凍死が苦しいかどうか、深く考えた訳ではありません。

高山本線の電車に揺られて、当時よく聴いていたA.Hというアメリカの歌手の歌が頭の中を繰り返し流れます。

旅と呼べるものではなく、暗鬱とした気分で、ただ雪が残っているのを願って窓の外を眺めていました。


途中で何となく下車しました。

そこからバスに乗り高山方面へ走ります。

段々、雪が積もっているのが見えて、この辺りだという場所で降りました。

道の側の、少し景色が良い所に座り、母が持たせてくれたおにぎりを食べようと思いました。

当然、母には山の方に遊びに行きたいと言って家を出ています。

母の料理の腕前は別段上手い訳でなく、そのおにぎりも特に美味しい訳ではありません。

それを食べた時、なぜか悲しくて涙が出ました。


そして、反対方向のバスに乗りました。

今生きているのは、特に美味しくない、そのおにぎりのお陰です。