大好きな『浄瑠璃寺』に8年ぶりに行きたくて、奈良の宿をとった。ところが、奈良駅からの急行路線バスが週末だけの運行になったことを知らなかった。というわけで、今にも降り出しそうな空も気になり、タクシーで一気に『岩船寺』に向かった。

ちょっと想定外だったのは門前の駐車場に大型の観光バスが停まっていたこと。門をくぐり抜けると、目に飛び込むのが三重塔と咲き誇る紫陽花の花、それほど広くない境内を全て覆い尽くすかのようで、今や知る人ぞ知る「あじさい寺」、団体観光客の嬌声に邪魔されることなく境内を一周した。

 

そして、30分の待ち時間のあるコミュニティバスを待つか、歩き出すか空を見上げながら迷ったが、降られない方に賭け、『浄瑠璃寺』へと歩き始めた。

田園風景の中、概ね下り道を25分ほど歩いたろうか。

 

いよいよ8年ぶりの『浄瑠璃寺』の門をくぐる。

まずは国宝の「本堂」、ここには九体の阿弥陀仏が祀られているが、今はうち二体が修復のため外に出ているとのこと。

この「本堂」から池を挟んで真東に建つのがやはり国宝の「三重塔」でここには薬師如来が祀られている。

そして「三重塔」のたもとから西を見れば、九体の阿弥陀仏が祀られる「本堂」、この景色こそが仏教の西方浄土思想を具現化したものだとわかる。

春秋のお彼岸の時季には、三重塔の後ろから陽が昇り、九体阿弥陀仏の真後ろに陽が沈むという。

 

久しぶりに『浄瑠璃寺』を訪ねたわけだが、特に何をするわけでもないのに、いわゆる絶景に出会えるわけでもないのに、なぜかすごく癒される。仏教の思想については全く不案内ではあるのだが、そこに立てば、少なくともその時だけは、極楽浄土というものがイメージできるからかもしれない。写真からは伝わらない、これからは少なくとも一年に一回はそこに身を置きたいと思う。確か10年以上前にもそう思ったはずなのだが…。