ずっと疑問に思っていたことがある。

 

どうして、当時世界一民主的だと言われていたワイマール憲法下で、ヒトラーのような怪物が権力を持つようになったのか?

 

どうして、謹厳実直なドイツ人がヒトラーに熱狂したのだろうか?

 

疑問には感じていても、自ら研究しようとも思わなかった。というわけで、興味本位でこのような本を読むことになる。権威に弱い私としては、ヒトラー研究の第一人者によるものだと知れば、読まずにはいられない。

 

ヒトラー率いるナチ党は直接的な暴力行為によって、権力を掌握したわけではない。何度かの共和国選挙、地方選挙を経て、得票数や議席数を増減させながら、その地位を高めてきた。そして連立内閣に加わり、政権運営に一定の影響力を持つようになるまでは、いわゆる政局を勝ち抜いた、そこには銃や暴力をちらるかせながらも、その政治力もなかなかのものだと理解している。それにしても簡単に独裁政治が確立してしまう憲法、制度的に欠陥があったとしか言いようがない。

 

しかし、なぜ勉強熱心で謹厳実直な民族であるドイツ人がヒトラーに熱狂したのか、選挙でナチに票を投じたのかはさっぱり理解できない。第一次大戦に敗れ、疲弊した国にはその賠償責任が課され、経済的・財政的に追い込まれた。そこに演説が圧倒的に上手いヒトラー、そしてプロパガンダ戦略に長けたナチ党に心奪われたということなのだろうとも思う。そして気づいた時には遅かったのだろう。

 

アドルフ・ヒトラー、史上最悪の戦争犯罪者であるとは思うが、その独裁者への道のりについては興味深い。面白いもので、時々ヒトラー本を無性に読みたくなることがある。偉そうなことを言いながら、「わが闘争」も読んだことないのに。