『マスターズ』(ちくま新書)を読み終えると、私の頭の中は途端にゴルフ一色、なんと単純にできているのだろう。

 

私がゴルフを始めた頃はジャック・ニクラウス全盛、それ以降一時代を築いたと云えるゴルファーは、トム・ワトソン、セベ・バレステロス、グレッグ・ノーマン、タイガー・ウッズ、フィル・ミケルソンくらいだろうか。あと、ニック・ファルドも入れていいだろう。そのうちの2人はレギュラーツアーの現役選手だが、失礼ながら力的には下降線上にあるようだ。

 

そして現在の現役選手の中には誰もが認めるような絶対的な存在は見当たらない。世界ランキングNo. 1のダスティン・ジョンソンやメジャーで無類の強さを発揮するブルックス・ケプカあたりがリードしている現状だが、一際輝いているようには見えない。そしてもう一つ思うのは、今の選手たちの活躍の期間が短いことだ、それはもしかしたら私自身がゴルフに対する関心が薄れつつあるから、そんな印象を抱くのかもしれない。

 

日本の男子プロゴルフツアーも面白くないが、抜けた存在のいないアメリカのツアーも面白みに欠ける。どうして長く活躍し続ける選手が少ないのか、絶対王者的な選手がいないのか、素人なりに考えてみた。

 

私が思いついたのは、クラブやボールの飛躍的な性能の向上だ。大手クラブメーカーはもちろん、ベンチャー的なメーカーも次から次へと高性能のゴルフクラブを開発し、プロゴルファーたちに提供している。そしてそれらは、簡単で距離も出て方向性も安定するといいことづくめ。しかも簡単なクラブだということが大前提だけに、取っ替え引っ替えしても、自分のゴルフへの影響はごくわずか。新しいクラブにも馴染みやすいとなれば、いいモノに当たれば自分のウイークポイントを道具がカバーしてくれる。すると、選手間の力量差が縮まり、たまたま一年調子が続いた者が、賞金王になったり、メジャーに勝ってるだけのような気もしてくる。

 

そして、いわゆるレジェンドと呼ばれるようなプレイヤーがなかなか生まれないのは、これは彼らにとってのゴルフがスポーツではなくビジネスのようになっているのではと思う。スポンサーなくしてツアーは成立しない、プロゴルフ界は他の競技に比べればビジネス色の濃い世界だとは思う。それでも、競技者がビジネスマン化してしまっては面白みがなくなる。クラブ契約にしても、とにかくカネ優先、どうせどのメーカーのクラブを使っても大して変わらないから。

 

道具の進化はアベレージゴルファーにとっては、ゴルフがより楽しいものになるが、ツアープロたちの場合にはどこかで歯止めをかけないと、トーナメントがどんどんつまらなくなる、そんな気がする。