ワールドカップ決勝戦を観ていて、「この人物についての本を読んでなかった」と思い出した母国の優勝に喜びを表すフランスのマクロン大統領だ。サブタイトルには「フランス大統領に上り詰めた完璧な青年」とある。「ル・フィガロ」紙のベテラン政治記者がそう言うのだから間違いはないのだろう。ただ、高校生が担任教師を略奪婚というエピソードの持ち主が、日本だったら?そんなことを考えながら読み進めた。

 

まずこの本を読んで思い及んだのは、大統領自身や彼の妻についてのことではない。国民による直接選挙でリーダーを選ぶ大統領制についてだ。その制度を手放しに礼賛するつもりはない、ただここに描かれるフランスの青年大統領マクロンや、アメリカのトランプ大統領のような、ユニークな能力を持ち合わせる新しいタイプのリーダーが誕生しやすいという制度が羨ましくもある。

 

さて、マクロン大統領だが、この本を読むとただ国民的人気に支えられて40歳を前に大統領になったのではないことがよくわかる。いい意味で「人たらし」「爺殺し」などと言われるが、人との関わりにおいては最後の一線には壁を作るような性格はまさに天才肌の政治家と言ったらいいだろうか。ただし、トップの地位に就いたあとは、内政・外交など様々な場面で調整能力も問われることになる、お手並み拝見と言ったところか。

 

信念を貫いて大統領に上り詰めた彼の横には24歳年上のファーストレディー、いまの言葉で言えば略奪婚になるわけだが、それが決して性愛に溺れたものではなく、知性によって結ばれた結婚だったということがわかる。彼の人生でたった一人の女性には、たまたま夫と3人の子供がいただけのこと。ゴシップネタには違いないが、それとて彼の強い信念により美談として語られている。この本の帯にあるように、マクロン大統領は完璧な青年、きっとこの著者は彼の大ファンなのだろう。実はもっと負の部分が書かれていると思っていたのだが…。