サブタイトルに「ヒトラー政権誕生の真相」とある。ハードカバーでわずか250ページ余りにもかかわらず、読み応えもあり面白かった。
フィクションではないので、ヒトラーや政治に興味がなければ退屈かもしれない。
 
しかし、日本より民主化の進んでいたドイツでどうして彼のような怪物が誕生したのか、少し考えればそんな疑問が誰の頭にも浮かぶことだろう。
 
実は私は誤解していた。国政選挙や幾つかの地方選挙で収めた成果が独裁者ヒトラーを生んだと認識していた。つまり、国民の多くが熱狂し、誤った判断を下したと思っていたのだ。ところが史実を追えば容易にわかったことなのだが、実は直前の選挙に敗れ、活動資金にも窮し、党の存続が危ぶまれる中でヒトラーは首相に就任した。
 
当時の権力者たちの思惑、様々な偶然が重なり、それが必然になった。1933年1月、わずか30日間の間に幻想が現実になった。この本は、その30日間のドキュメント、大統領と現職の首相そして前首相たちの政争が描かれている。結果的にドイツだけではなく、全ヨーロッパ、アジア、アメリカまでを巻き込んだ戦争の火付け役が無能な政治家の誤った政治的判断から生まれたなんて、にわかには信じがたいが、それが事実らしい。