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出合い

彼女と出会ったのは火事なる少しまえでした。




同じ仕事場で働いていてたまに見かけて少しかわいいなぁと思っていました。




彼女の派遣の期間が切れる最後の日に電話番号を聞き、




その日の帰りにさっそく飲みに行きました。




次のデートは水族館でするこになりました。




約束の前日に家が火事になりました。




僕は彼女に嘘をつきました。




親戚の葬式に出なきゃならないと・・・




家が火事になったこと・・・弟のことを話したくなかったからです。




なぜだろう?




弟のことから逃避したかったからかもしれない。




弟と一生付き合わなければならない僕。




そんな僕と将来を考えて欲しくないからかもしれない。




彼女のことを単なる遊びとしか考えていなかったからかもしれない。




その嘘が僕を苦しめる。




自業自得だ。




次に彼女にあったとき、明らかにいつもの僕とは違ってた。




火事から間もないこともあり、テンションがいつもより高かった。




二回目のデートでいきなりホテルに誘っていった。




相手に多くを期待する彼女を満足させるため、自分を誇張した。




こうして張りぼての僕と、彼女の付き合いが始まった。










言葉

弟は統合失調症でした。


統合失調症とは病気です。


脳内化学物質が通常に機能しなくなる病気です。


気の持ちようでよくなるものではありません。


脳内科学物質の機能を安定させる?ために薬が必要です。


その薬は脂溶性で、成分が効きはじめるには時間がかかり


薬を飲むのを辞めてもしばらく抜けないようになっています。


弟が状態を悪くさせた原因がここにあります。


火事の起きる前、弟の状態は今までにないくらい良いものでした。


一緒にサーフィンをしたり、アルバイトをしたり・・・


薬を飲むのを辞めた弟は、薬が抜けると状態は今までよりさらに悪化したのです。


火事で煙を吸って入院した弟の状態は悲惨でした。


いっそのこと死んでたほうが楽だったのにと思いました。


もし、僕が弟だったら殺してくれと思っただろう。


気管支炎で人工呼吸器を付け、


暴れないように手足を縛られ、


熱で顔面はやけどをし、


差し歯にした前歯は熱で溶けていた。


人工呼吸器が苦しくなり、自分で無理やり抜いて気管支を傷つけた。


目はうつろ。


声にならない声を出す。


人がこんなになると知っている人はどれだけいるのだろう。


自分がこうならないとは100%言い切れないのに。


手足が縛られているので嫌なんだろう・・・ほどこうともがく。


力いっぱいもがく。


うつろな目のまま。


会話にならない奇声とともに。


そして聞き取れる潰れた声を聞くことができました。


「大丈夫だよ」


???


「はじめるのに遅すぎるなんてないから」


!!!


お見舞いに行った僕に掛けられた言葉です。
































火事

今から一年ほど前の夜に・・・家が火事になりました。


夜の12時過ぎだろうか・・・


寝ていた僕は急に咳き込み目が覚めました。


部屋は薄暗かったのですが、薄く煙が充満しているのが判りました。

最初は火事だとは思っていませんでした。


台所で鍋かフライパンの火を消し忘れて、そこから煙が出ていると思いました。


焦げ臭いがまさしくそれだったからです。


もう、何だよ!


と思いながら部屋の戸を開けた瞬間にやばいと感じました。


階段から昇る煙で視界はさえぎられ、


煙が持っている熱で顔は熱くなりました。


煙が熱いのです。


火はまったく見えなくても煙だけで熱いんです。


驚きました。


戸を閉めてどうすればいいか考えました。


頭に浮かんだのは弟のこと。


この煙は弟が何かしら関係しているだろうとすぐに頭が浮かびました。


今まで何度も自殺未遂をしていたし、何度も死にたいという話を聞いていたからです。


もう一度自分の部屋の戸を開け、


すぐ隣にある弟の部屋を開けました。


弟の部屋からさらに密度の濃い煙と熱を感じ、


パチパチとこもる音が聞こえました。


すぐに戸を閉めなおしました。


階段の下から煙が来ているので、燃えているのは一階だけだと思っていたのに


隣の弟の部屋も煙と熱、しかも音が聞こえるということはかなり延焼していると感じました。


弟がどこにいるのか気になりました。


とりあえず叫びました。


返事はありません。


僕は最低の人間です。


もし仮に弟が倒れていたとしても助けなかったかも知れません。


死んでしまえばいいと考えたからです。


死んだほうが弟も楽になれるだろうと思ったんです。


その次に僕はベランダに出て、親の寝ている部屋の雨戸をはずして親を起こしてベランダに非難させました。


父親は真っ先に弟のことを心配しました。


そして煙で充満した廊下にでて弟を探しに出たのです。


父は煙を吸って軽い一酸化炭素中毒とのどにやけどをおいました。


僕にはあの恐ろしい煙の中に飛び込むことはできないと思った。


親の子を思う気持ちの強さを感じました。


父親が弟を探す間、


僕は自分の部屋から携帯を持ちだしベランダから消防署に通報しました。


当たり前なのですが、電話の声は落ち着いていてとても冷静です。


でも僕はあせっていたので、余計なことは聞かないでさっさと消防車よこせ!


と思いながら、状況や家族構成などの質問に答えました。


僕はベランダから飛び降りることは簡単ですが、親はそうはいきません。


弟の部屋側から延焼しているのと、煙で階段は使えないので、


それとは逆側のベランダに親を待機させました。


消防の人が来るまではそのほうが安全と考えたからです。



僕はベランダから飛び降り、母親から玄関の鍵を投げてもらい玄関を開けました。


やはり煙と熱がすごく入ることができませんでした。


弟の名を呼ぶも返事はありませんでした。


弟の部屋がある側(延焼していると感じていた側)の家のベルを鳴らしました。


燃え移ると大変だと思ったからです。


僕が弟を呼ぶ声のせいか近所の人がちらほらでてきました。


僕は火事であることを告げ、消火器を借りました。


煙はあるものの火は見えなかったので意味はありませんでした。


弟は見つかっていなかったので


自分の着ていたシャツを濡らして、顔にあて玄関から入って探そうと思いました。


でもだめでした。


熱さと煙は怖いです。


そんなこんなでうろうろしていると救いの神がやってきました。


消防車と隊員の方たちです。


僕は二階のベランダに親が待機していることと、弟がどこにいるかわからないことを告げました。


隊員たちはマスクを着けて、煙と熱のすごい家へと入ってゆきました。


いくらマスクと防護服を着ていても僕にはできないかもしれないと感じました。


それくらい煙と熱がすごいのです。


本当に消防隊員の方達は凄いと思いました。


大変な仕事です。



親が救出され、消火が終わっても、弟がいませんでした。


混乱しているところに、近所の人が弟を連れてきました。


そこにいたけど弟ですか?と。


弟でした。


顔はすすで真っ黒でかなり汗をかいていました。


呼吸が凄く荒かったので父親と一緒に病院で検査を受けるため救急車で病院へ行きました。


母親も付き添いました。


僕は現場確認のため家に残りました。


延焼していたのではなく、火元は数箇所ありました。


一階のソファー、二階の弟の部屋、二階のトイレの本が少し・・・。


確認が終わると、近所の人の車で病院へ向かいました。


父親と弟は集中治療室でした。


弟は面会謝絶、が命に別状はないと。


父は一日入院して様子を見れば大丈夫だと。


僕と母親は病院の待合室で永遠に来ないかと思えるほど長い夜を明かした。


朝6時頃、兄二人に電話をした。


これからどうしたらいいかあまり考えられなかったし不安だった。


兄がいてくれて良かったと思った。