サンドウィッチマン 富澤たけしオフィシャルブログ「名前だけでも覚えて帰ってください」Powered by Ameba-090505_160544.jpg
小雨の降る奈良。

大仏様にとってこの程度の雨ではシャワー代わりにはならないであろう。

イベントにとって雨は敵だが、その日の天気は運でしかない。

そんなことを考えながらウォシュレットを止めた。


水色と白のアルゼンチン代表ユニフォームにゆっくりと袖を通す。

背中には背番号11『TEVEZ』のマーキング。

熱い舞台ではオシャレより、機能性を重視した衣装を着る。
今ここでどうのこうの説明したところで始まらない。
早い話デブだから汗対策をしているだけだ。

ユニフォームの通気性の良さを体験したら、もうあなたはユニフォームという呪縛から逃れられないはずだ。

ダラダラと汗を流しながら熱いとわかっているのにネクタイをしめてスーツを着て得意先を回る。

そんなサラリーマンのあなたが一度ユニフォームの良さを味わってしまったならそう、ユニフォームを着たいがためにきっとスポーツ選手を目指すはずだ!

そんなことを考えながらウォシュレットを止めた。


暗い舞台袖でピンマイクを付ける。

数歩歩くだけでそこは千人の目が注がれる舞台。

すぐ横にある闇の世界。

それは産声をあげる直前に胎内にいる赤子にも似た心境か。

深呼吸をする。

期待と恐怖が身体を支配する。


時はめぐり 

また夏が来て

あの日と同じ 

流れの岸

瀬音ゆかしき 

杜の都

あの人はもう 

いない


青葉城恋歌が流れる。

スイッチを入れる。

期待だけが全身に漲り、舞台へと飛び出す。

そんなことを考えながらウォシュレットを止めた。


外の空気を吸いに出た。

ふいに手を洗っていないことを思い出した。

小雨に向かって手を広げた…。