いつも記事を読んでいただきありがとうございます。


今日は、Twitterの方で予告したとおり、トレーニングアプローチにおけるアメリカと日本の違いについてお話します。


先に断っておきますが、僕はプロのコーチでもなければ、バイオメカニクスのエキスパートでもありません。なのでここに書いてあることは、僕が観察、考察してまとめた情報です。そのつもりで読んでいただけると幸いです。


(日本との大きな違いの一つが、アメリカ人の「シャツ脱ぎたがり問題」。このこともそのうち書ければと思います。)



去年11月ににTwitterで、こんな話をしました。





この文章の最終的なメッセージは「どんなアプローチでも、練習においてしっかり意味付けをして行うことが大事だ」という、極めて当たり前でシンプルなものですが、その説明の中で、日本とアメリカの練習の決定的な違いを述べています。


キーワードは、 in control。


この少し曖昧な in controlを、具体例を出して説明したいと思います。



僕が所属した、バークレー校での練習では、ペース指示にこのような言葉が使われていました。

5000mDI
5000mGI

DIとGIはそれぞれ、Day Intervalと、Goal Intervalの略です。

DIは「5000mの中間走のペース」、「GIは、「5000mのラストのペース」という意味になります。

例えば、5000mが14分ちょうどで、13'55あたりを狙うの選手の場合、5000mDIは2'47~49で5000mGIは2'40~45あたりになります。

しかし、コーチが細かいペースの指示はしないこともしばしばありました。あくまで時計に頼り過ぎず「感覚を大事にすること」を求められました。練習の中で速いとか遅いとか感じたら、流れの中で修正するように、と。


つまり、タイムにばかり気を取られて、自分の動きのコントロールを失ってしまっては元も子もない、ということです。


そして練習メニューには、DIやGIに加えて

400m(kick)

などとメニューの最後に書かれていることがありました。これは分かりやすいですが、「GIより速く5000のラストのつもりでスパート」みたいな意味です。

ここで気をつけたいのは、kickとオールアウトは違う、ということです。kickは「ラスト一本フリー」ではありません。

コーチは、57~59秒くらいのkickをしているときでも「in controlで。力まないように。」と口酸っぱく注意していました。


ここで、トレーニングメニューのサンプルを一つ。

k repeat 
5×1000 (1~3set=5k DI, 4~5set=5k GI, R=1min)
2×400 (kick, R=2min)


(余談: これ、今までの陸上英語教室シリーズを全て読んでくださった方は、言葉にして読み上げることが出来るかと思います。是非やってみてください。)


もちろんkickをしたあとは呼吸も乱れ、脚も相当キツくなりますが、ゴール直後に "good job!!" とお互いを讃え、ハイタッチをする習慣があった僕たちは、なるべく疲れを見せないようにして走り切り、ハイタッチをしました。


走り終わった後、倒れ込んでなかなか起き上がれない、みたいな選手はいませんでした。

(練習後一人ひとりとハイタッチする習慣、大好きでした。)


コーチも、基本的に前向きなコメントしかしません。悪い走りをした時もです。それは「選手一人ひとりが真剣に練習に取り組んでいる」という信頼関係があるからです。(コーチと選手の関係の記事


というか、真剣にやっているのに走りが良くないときは、何かしら原因があるはずなので、しっかり議論をして改善するのが良いに決まってますよね。頭ごなしに怒られたりしたら、気分は悪いわ何の改善にもならないわで、マイナスしかありません。


こういう意味で、悪い走りをした選手を頭ごなしに叱りつけるコーチは、自らの無能を声高に訴えているようなもの、と僕は思います。




さて、少し話が逸れましたが、まとめます。


疲労度を上げすぎず、追い込みすぎずに次の練習を気分良く迎える。こうした練習を、コンスタントに続けて、シーズンを戦い切る。これこそがアメリカでのトレーニングの一番の特徴だと僕は考えます。


このようなトレーニングの姿勢は、夏の走り込みにも大きく影響してきます。アメリカの大学生は、一週間毎日40キロ!とか月間1000キロ!とか、まずしません。夏の走り込みに関しても、weekly mileage (陸上英語トレーニング編を参照)を中心にしたコンスタントさが表れます。


次の記事では、この「夏の走り込み」の日米での違いを掘り下げていこうと思っています。


今回もお付き合いいただきありがとうございました。


では次の記事で会いましょう。
See you soon!!