辛口ジャズコメント 25 感情の表現-1 | 春日部市ジャズバー『JAZZ BAR 武里 SUNNY SIDE』

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25 感情の表現-1

歌なので、また音楽なのでそれなりに感情は必要だろうと考える。 
しかしジャズの場合、日本の音楽文化では殆ど見出せない感覚が必要だ。 
単純に歌詞を訳してこんな感じだろうか!などと安易に解釈してはいけない。

ジャズに於いて、出過ぎた感情の表現は聴いて居て実に気持ちが悪い。 
私が今まで聴いて来た日本人ジャズ・ボーカリストの殆どが、曲に関しての感情を誤解して居るように感じられてならない。 
特に女性ボーカルに多く感じられる。 
それぞれの曲に対してそれなりの解釈は当然必要だと思う。 
否定している訳ではなく日本語に訳して理解するのも、勿論良い事とは思う。
 

何度か触れたが日本には演歌がある。 
韓国や台湾、中国等も演歌に良く似た技法で、ジックリ聴くとメロディーに関して言えば日本と余り変わりは無い、地域土着のメロディーだ。 
ソウルの一寸したスナックなどで流れている趙ヨンピルの歌う韓国の流行歌などを聴いていると、全くの演歌だ。 
尤もこの人“ハン”(*1)の出だと地元の人から聞いた事が有るので、典型的な土着の感覚なのだが。 
台北の街角辺りを歩いていて流れ聞えて来る台湾の流行歌も、メロディーは演歌だ。 
が、日本の演歌歌手の歌い方とは少し違い、どちらかと言うと男性、女性歌手どちらもオペラ調だ。
だがフィリピンまで行くと全く状況は違ってきて、マニラ辺りのレストランで彼らの演奏する歌やメロディーを聴いていると、何故か私にはスローなマリアッチ(*2)に聞える。 しかしこれは人の感覚に関するモノで上手く表現できない、この様な事柄を文章で表現する事の難しさを感じているのだが・・・。
 

以前にT-Sax奏者の秋本薫(*3)さんと共演した時に氏から「美空ひばりさんが歌ったリンゴ追分と全く同じメロディーがアフリカの民謡に有る」と聞いた事が有る。 
こんな事を考えて居ると、結局メロディーには国境など無いと言う事に気づく。
これも昔聞いた話だが、十八世紀の後半で既に現在あるメロディーの殆どがクラッシックの偉人達に書き尽くされているのだそうで、「膨大な数の譜面の中の何処かに、どの旋律も存在している」との事。 
確かに考えて見ればタカだか12の音しか無いのだから、先人が寄ってタカってイジクリ回せばそれも当然、妙に納得する。 
つづく。(以後、感情の表現-2に続く)


*1.ハン: 漢字では“怨”と書くらしい、韓国の伝統民謡の一種。
*2.マリアッチ: 主にメキシコから中南米地域にかけてのリズム。 
*3.秋本薫(Akimoto, Kaoru ): 1970-80年代、フジテレビの生放送番組“三時
のあなた”のオープニング及びエンディング・テーマを自身のカルテットを率いて10年余りに至って生演奏。 
NHK紅白で青江美奈との共演など、ジャズT-Sax奏者。