「4年間、積み上げてきたものを、全力で一生懸命プレーしていきたいと思います。熱い応援をよろしくお願いいたします」
試合後の長谷部の挨拶で一段と大きい激励の拍手と声援が、チームに注がれた。
この光景を見つめながら、4年前の記憶が頭によみがえってきた。
南アフリカW杯前、国内最後の壮行試合でライバル韓国に0-2で敗れ、スタジアムには失望感が漂っていた。チームキャプテンに就任した川口能活の挨拶の言葉はわすれたけど、あのときの何とも言えない重たい雰囲気は忘れられない。あれから4年が経ったのだと、時の流れの速さをあらためて実感いました。
18本のシュートを放ちながら1-0で終わった試合。日本は鹿児島キャンプで相当に肉体を追い込んできており、予想どおり全体的に体が重く、いつものスピーディーなパスワークも見られなかった。とはいえ、組織的でモチベーション高く戦ってきたキプロスに対し、課題は多くあれど、勝って気持ち良く日本を飛び立ちたいという思いはひしひしと伝わってきた。
先制ゴールを挙げた内田篤人からも、体が重そうな立ち上がりからギアを上げていく長友佑都からも、そして激しいファイトを見せる長谷部からも。ゴールを狙ってやるという野心的な大久保嘉人のギラギラしたプレーにも、それを感じることができた。
この試合で気になった点で言うなら、大黒柱である本田圭佑の状態があまり良くないと感じたこと。合流して間もないこともあるだろうが、ここまでミスが目立った試合もなかなかない。ボールが落ち着かない印象で、絶好機も活かせない。岡崎慎司もいつになく重かったとはいえ、コンディション的には、本田が最も良くなかったように感じた。
そしてチームの攻撃面で気になったところを挙げれば、パスワークのチャレンジを選択せず、サイドから中に送る「意図を感じない」クロスが多かったこと。中に合わせるしっかりとした狙いがあればいいのだが、ニアに飛び込んでくるような場面はない。かと言って前線に高さがない以上、単純に放り込むクロスでは効果的とは言えない。相手には190cmを誇るセンターバックもおり、クロスには意図的な狙いが欲しかった。だが後半に入ると、ボールを奪ってから縦を狙うような、前線に当てるパターンが増えた。得点にこそ結びつかなかったものの、前半にはない「頭のスピード」を後半に見ることができた。特に後半スタートから投入された、実戦復帰したばかりの長谷部の動きの良さが目についた。セカンドボールへの意識、前線に顔を出して攻撃に絡む意識は、相当に高かったように思う。試合後、長谷部はこう語っている。
「早いタイミングで縦パスを入れてというのは、相手も引いていたので考えてました。ただ、相手も疲れていたので、後半のほうが押し込めるかなというのはありましたけど。
引いた相手には速くボールを回していかないと、各駅停車じゃないけど、もう1個飛ばしたりとか、あとは早いタイミングで前に当てたりとか、そういった緩急つけないと、こういう相手には厳しいので、意識していました」
チームの守備面で言えば裏を取られる場面もあったが、シュートをわずか2本に抑え、無失点で乗り切ったことはチームにとって意義があるだろう。全体をコンパクトにしながらセカンドボールを拾えたのも大きかった。長身のストライカーがいるコートジボワール、ギリシャを考えれば、前線に180cm台後半のストライカーがいたことは、いいトレーニングになったはずだ。
相手の高さに屈しないためには、クロスを簡単に上げさせないことも重要。連係してつぶす守備も見ることはできた。ただ、上げられてしまった場合の対処を含め、まだまだ修正すべきポイントは少なくない。
「ギリシャはしっかりブロックをつくって守備してきて、そこからのカウンターはきょう(のキプロス)よりも、間違いなく高いレベルの力を持っています。それにセンタリングに対しても、もうちょっと改善していかなきゃいけないかなと思います。まだまだボールウォッチャーになりすぎているのかな、と」
しかし、W杯に向けて指宿でのキャンプを順調に終え、疲労が溜まっているなかでの試合で、チームの現状を出発前に確かめられたのはプラスだと感じる。格下の相手に勝って満足しているわけでもない。それに先発が続いている山口蛍、森重真人らが結果を残し、メンバーがどうなっていくかまだまだ分からない状況だ。大久保の加入もあって、前線の組み合わせにしても変わってくる可能性もある。
勝負に向かう雰囲気が、高まっているのは間違いない。長谷部は言う。
「監督が(試合後の)ドレッシングルームで『きょうは疲れているなかで後半も良かったし、満足している』とは言ってくれましたけど、多分、心のなかでは満足してないんじゃないかなって思います。選手自身も満足はしていない。チームの競争という点では、目に見えて、誰が出るかわからない形になっているので、それは非常にいいことだと思います。練習からみんなの意欲が感じられるし、チームに競争は非常に大切なものだ、と。それは凄くいい傾向」
失望感をバネにしたのが前回の南アフリカW杯。今回は日本中の期待感を力にする。
国内でのスケジュールをすべて終えたザックジャパンは、29日に事前キャンプ地のアメリカ・フロリダへと飛び立つ。
