忘れられない景色といえば何があるか。
時は少し遡って大晦日。紅白歌合戦でステージから見たあの景色。司会者の橋本環奈、大泉洋に総合司会の櫻井翔、演者の坂本冬美やスカパラ、そして審査員たち。ドラマや映画、バラエティやスポーツで見てきた、存在してるか観測がほぼ不可能な人たちが当たり前のようにすぐそこにいて、みんなで盛り上がっているあの景色。
紅白に出る。
青天の霹靂だろう。最初は年始にNHKの番組に出てお祭りのことを紹介すると聞いていた。だからNHKに出て「NHKをぶっこわーす!」とか言って暴走して放送事故を起こすなんていう諧謔で盛り上がっていたのに。後日NHKから送られてきた台本に目を通す。「北海道出身司会者と福岡県出身司会者」。確定演出である。立花孝志みたいなノリで出演できないという緊張と、紅白に出られる嬉しさが込み上げてきた。
年末年始は決まって巷で、紅白を見るかガキ使を見るかの論争が勃発する。そしてその争いは年始まで尾を引くこともしばしばである。日本の風物詩だろう。今年はガチ使の放送がなかったが、それでも紅白を見るだのなんだので盛り上がっていた。でも今回は見るんじゃない、出るんだ。一体人生を通して紅白に出る人なんて、この世に何人いるんだろうか。「明日紅白あるから早く寝るわ〜」とか「紅白のリハあるから今日空いてないわ〜」なんていうあまりにも冗談としか聞こえないセリフを誇らしげに言ったり、「紅白」というなんともシンプルで何かのおふざけにしか見えないLINEグループでやり取りをする年末年始を過ごした。
2022年が終わる頃になっても、悔しくも世界はコロナ禍から抜け出せていない。そんな状況でも今年はあらゆる場所で「3年ぶり」なんて見聞きした。ライブやスポーツなどのイベントで2年間制限を受け続けた分、「3年ぶり」という言葉に重みがあった。お祭りも例外ではなく、日本全国でお祭りが3年ぶりに開催された。そんな中でお祭りが活気づいてきたエネルギーを紅白の舞台からお茶の間に届けようというNHKのアイデア。そしてこのアイデアに乗った全国のお祭りニキたち。出身地はそれぞれ違えどそこに壁なんて当然無く、みんな一体となってNHKホール、そして日本全国を盛り上げた。
そんな皆と見た夢のような景色は、すごいとかそんな月並みな言葉では表せないほどで、だからこそメガネなんて授業くらいでしかかけない自分が見栄えなどガン無視してメガネをかけたのは大正解だった。あの景色は死ぬまで忘れないだろう。
その舞台で川原さんは齋藤飛鳥のバミリがある場所に立って披露して自分のエキスをばら撒いたとか言ってるから、実質齋藤飛鳥は川原さんである。リハの時も橋本環奈の数メートルってところですれ違ったり、練習してるキンプリのすぐそこを通ったりしてるから、僕らも実質女優でジャニーズである。あと塾監は日向坂46をすぐそこで見たらしいから、塾監はピチピチアイドルだ。そんな論理なんて破綻したメチャクチャなことを言って味を占めちゃうくらい楽しい年末でもあった。物理的に芸能人と会えたのもまた思い出だ。
これから毎年紅白を見る度に間違いなく思い出すだろう。夢じゃなく実際に見たあの景色を。芸能人とか学生とかそんな垣根を越えてみんなで一体となって盛り上がったあの景色は一生物だ。