ホルンに限らず、金管楽器の発音というのは生命線だと思います。

 

学生さんや大人の愛好家さんでよくある

『長く伸ばすといい音がするけど、短い音だとつぶれてしまう』

これは、発音にトラブルを抱えてることがほとんどです。

その『長く伸ばしたいい音』も音の始まりはだいたい潰れていますね。

 

ただ、最初から『長く伸ばす前提』なので短い音よりしっかり空気が使えている部分があるので若干いい音かもしれませんが、それでも技術的にはあまり変わらないので潰れていることがほとんどです。

 

また、厄介なのがタンギングですね。

タンギングは文字通り舌を使ってアレするわけです。

 

アレの方法①

舌で空気をせき止めて圧力がかかったところで舌を歯から離すとドバっと空気が入るので、多少出口の穴(アパチュア)周りの肉が力んで硬くなっていても一時的に強い空気が発生してパチンと音が鳴ります。

弓矢の力のかかり方に近いかもしれません。

しかしこの方法は口の中の空気を一気に使い切るので圧が下がり、そのあとの響きも音程もぐちゃぐちゃになってしまいます。

 

アレの方法②

多分少数派だと思うのですが、歯から離れた口の奥の方にある舌を発音のタイミングで勢いよく前に突き出すやり方です。

毎回振りかぶって打つゴルフのショットのようなイメージでしょうか。

これは連打ができない上に、方法①のような気流の乱れも発生するので全くいいことがありません。

方法①②に共通しているのは、発音の大部分を舌(の筋力)に頼っていることです。

むしろ、舌を使おうと力むことは首やアンブシュア周りの筋肉の無駄な緊張につながります。

そのあたりは複雑につながっていますからね。

 

●舌から音は出ません。あきらめてちゃんと体をつかって空気を出しましょう。

 

空気をしっかり使えていれば舌、首、唇の筋肉が柔らかければ柔らかいほどスムーズに音がでますよ!

 

私は長年発音の潰れと遅れに苦しんできました。

以前、加齢と向き合う話の回でも書きましたが、空気圧が落ちていることに気が付かず、それまで硬い筋肉の使い方でもなんとかなっていた音が使えなくなりました。

それと同時に心因性の萎縮が起こって、音を出すのが怖くなってしまったのです。

 

結果、頑張って吸っても空気を吐けなくなり、そして①の奏法に頼ってしまったところ、怖くて舌を離せない、という地獄の悪循環に陥りました。

 

10年以上苦しんだと思います。あれはもうイップスと言っていいでしょうね。

しばらくはタンギングなしであいまいに発音することで危険な音から逃げました。

当然タイミングが遅れます。遅れないように早めに吹こうとすると、一緒に吹くメンバーと合いません。

 

改善のきっかけは、全力で吹かなければ不安でつぶされてしまう呪いから解放されたことです(笑)昔からとても体が大きく、何をするにも『大きいから』というフィルターで見られる人生だったのでホルンの演奏もずいぶん他人の目ばかり気にした嫌味なものでした。

ある時、『そうだ、きれいに吹こう』とすばらしいアイデアが降りてきました。神様、感謝します(笑)

 

そのあとの考え方は簡単でした。

どうやったらきれいな音が出るか、だけ追求すれば全てが解決に向かいました。

発音のこと、タイミングのこと、恐怖感のこと・・・。

かなりゆっくりと時間がかかるリハビリでしたが、やっと自分の方向性が見つかったような気がします。

 

さっき、とあるプロオーケストラの動画を観ました。

トランペットが遅い。大事なトゥッティで毎回遅い。遅れてるうえに音が潰れている。そして音色が汚い。

 

数年前の自分を見ているようで心がキュッと縮みました。

 

なんだか気持ち悪くなって、同じ曲の歴史的名演と言われる動画を探して観ました。

タイミングもイントネーションもばっちり爽快。最近の流行りの音ではないけれど、私は大好きです。

 

ホルンのレッスンやってます。お気軽にご相談ください。

 

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心電図止まりそうで怖いけど(笑)私のサイズあるかなー?