待望 それは春を待つ事
掃き出し窓に 垂れる雨粒 庭を濡らすひとしずく今にも 降り出しそうな曇り空遠く 侘しそうに野良犬が ないている空を 見あげて大地を 踏みしめて彼は 独りぽっち雨を恨み空を憾み雨粒を 憎み小さく 震えるか細い 足は土の中に 沈み込む彼が いのちの奥底に密かに 燃えるいのちの ともし火雨粒の一滴が薄汚れた 彼を覆う毛並みに 流れる身体を 冷やしいのちを 削り身を 引き裂いて天を 睨んで遠吠えに ないている悲しいんじゃない切ないのでもないそれが 彼の 生き様なのだ誰にも縛られず囚われの 身に囲われる訳でもない路傍の 田植え前の雑草の 如くに独り 立っているのだ震えても 引き裂かれてもじっと耐える 心の強さ人に 媚びず甘えず 頼らず一匹の 野良犬となって生きる 道を自ら 選んで彼らしく 思うがまま生きてゆく痩せこけた 胴体にあばら骨が 浮き上がるそれすら また彼らしいじゃないか彼の遠吠えは無限の 曇り空に広がり 満ちる彼が 生きるそのままにそこに 彼が 在るその 存在すら景色の 断片に溶け込んでいたいなければ いけないようにいなければ ならないようにいのちの 燃えるその炎が 天空に広がり燃え盛るようにどこまでも いつまでも彼は そこに居続けた大地に 根を 伸ばすように震える 足を 大地につないで・・・・永井龍雲・桜桃忌