ほおっとした 昼下がり
小さな 炬燵の中
お前の足が 俺の足に
絡みつく
窓の外は クリスマス
というのに 静寂の雪
浜の 風が 運んでくるのか
少し 斜めに
雪が おちてくる
もうすぐ 1980
区切りが 良いのか
悪いのか よく分らぬ年
願っても 願わなくても
来年は やってくるのさ
炬燵の上に 一本の
ビール
つまみは サキイカ
袋から こぼれて
ピンクの台の上に
広がっている
沈黙の時間
お前の足は
別の生き物のように
俺の足に 絡みつく
あったかさと
気持ち悪さと
気持ちよさが
同居してる
会話のない部屋に
一匹の猫の ナキ声
薄っぺらな 扉へ
お前は 走ってく
やたらに お前の足が
真っ白に 見えて
不思議な 世界へ
引き摺り 込まれる
妙な 感覚が
眠気を誘う
炬燵のせいだろう
うとうとしながら
うつろな 現実を
眺めている
もう 俺も 25
あっという間だったように
思ったり 滅茶苦茶
長かったような
気もする
この時間だけが
ちっちゃな 幸せなのかも
知れないよな
眠気のまま 惚けた
顔した俺の手を
舐めに来る
彼は 捨て猫
家の前で
扉があくまで
にゃんにゃん ないていた
悲しいのか 寂しいのか
空腹だったのか
あれから もう二年
いつの間にか
家の主人に
なってやがる
俺の居場所を 奪って
堂々と 眠ってやがる
お前も 俺も
彼女の家の 居候
いそうろうのまま
もう三年か
1980 年末の
雪は ただ天から
おりてくる大地も
木も 道も
全てを 真っ白にして
クリスマスの夜が
窓の外を 夕闇に
染めていった
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雪が降る日に
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