あっという間に

五月も終わり

早くも六月

水無月の夜は

どこか物悲しい


水が無い月ではなくて

無 と書いて の と

読ませるそうだ

水の月 水無月とか

諸説あるらしいけれど


六月と言えば 蛍狩り

蛍の寿命は また短い

水のきれいな 空気の

透みわたる 小川の

岸辺に よく飛んでいた

ほのかな 光りは

幻想的で

夢の中のようだった


生まれ故郷の こんぴらでは

なごしの大祓いという

儀式がある

なごし とは 夏越しの事

夏を無病でと祈る日だ


これが来ると 本格的な夏

讃岐の夕なぎと言われ

夕方になると 風がやみ

いきなり 蒸し暑くなる


そんな時 夕立の一雨が

涼を 運んでくれる

ひと時 涼しさが

町を包み込む


小さな 町に

一瞬 快適な時間が

訪れる


そして 満天の星空が

夏の夜を 彩る

そんな時 不思議に

嬉しかったものだ


病弱だった 私には

格子の入った

掃き出し窓から

見える 空は

電柱の 笠付電球の

明りと共に

思い出の一つに

なっている


それは見事な

美しい 星空だった


綺麗な 星空が

見えると良いな

あの頃の星空は

望めないけれど

せめて 一瞬だけでもと

思いながら

空を見上げてね



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星月夜/永井龍雲

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