この本は「発達障害=犯罪者」という内容ではありません。
むしろそのイメージを払拭するのが、この本と記事の目的です。
また、コメントする際も攻撃的な言葉は使用しないでください。
みなさん、「ハッショ」という言葉は聞いたことあるでしょうか。
これは2ちゃんねる(現5ちゃんねる)でよく使用される、発達障害を指す悪意あるスラングです。こんなひどい言葉が生まれるように、発達障害に悪いイメージのある人は少なくないと思います。
その一方、発達障害と診断された人も多くいます(大体10人に1人と言われています)。現に私の友達にも何人か発達障害を持つ人がいます。診断されていない人を含めたらもっと多いと思います。
発達障害が他人事ではないと、ここではわかってくださると幸いです。
というわけで、今回はこの本を紹介します。「発達障害と少年犯罪」です。
この本で扱うのは子供の発達障害、特に自閉症スペクトラムの子です。
冒頭で著者は精神科医の杉山登志郎さんの言葉を引用します。
「(少年少女が起こす重大事件と発達障害が結びつくことが)これだけ連続して起こると(凶悪犯罪と発達障害との関わりについて)説得力がない。(中略)
(発達障害への)きちんとした医療的、教育的ななされていない場合には、『極端な事件』に結びつく場合があることを認めざるを得ない」
この言葉は2005年のもので、有名な佐世保女子高生殺人事件が起こる9年前です。 そして20年近く経過した現代も、発達障害への医療や教育は十分でないと、少しでも発達障害について知っている人は実感していることでしょう。日本はいまだに精神医学後進国なのです。
とはいえ発達障害者がすべからく凶悪犯罪を起こすわけはない。実際友人として付き合ってみると、おもしれー人間で飽きないことが多いです。
では、発達障害者に何の要素が加わったら「極端な事件」に発展してしまうのでしょうか。
それは「虐待」であると著者は言います。
虐待は「脳を破壊する」行為と言われているのは有名な話です。
実際この本で示されているデータでは「自閉症スペクトラム障害を持つ子どもに虐待という要素が注ぎ込まれると、非行に走る可能性が2倍になる」「ネグレクトでは3.7倍」「身体的虐待があると6.3倍」と言います。
結論として、少年犯罪と発達障害を結びつけるのは「虐待」であるようです。
もちろん健常な子どもでも虐待などもってのほかなのですが、なぜ発達障害がとりわけ強調されるのか。
それは、彼らが持つ過敏さが考えられます。
発達障害を持つ子は健常な子に比べ環境に敏感であると言われています。そして「敵か味方か」という極端な思考も加わり、「世の中の人はすべて敵」と思ってしまうのです。
その過敏さに虐待という不適応状態がエスカレートすると、健常な子より強いストレスを感じてしまうのです。
そしてその後天的ストレスが重なりに重なり、事件につながってしまう、というわけですね。
他に著者は実際に犯罪を犯した少年たちにインタビューしたり、矯正施設にて行われているトレーニングについて記したりしているのですが、文量の都合で割愛します。実際の彼らがどんな思いで犯罪に手を染めてしまったのか、そして彼らをどうすれば助けられるのか、その難しさは読んでくださればわかると思います。
この本が出版されたのは2018年。6年前の本ですが、まだ現状は改善されているとは思えません。今でも十分に考えさせられる問題だと思います。
では実際の発達障害の人とお友達になるとどうなのか。
正直言います。めっちゃおもろいです。
マシンガントークとディープな話題に最初はギョッとするでしょうが、しばらくすると彼らの話に引き込まれていくのです。知らない世界の知識を深く語るその顔は楽しそうで一緒にいるだけでこっちも楽しくなります。そして、これはあまり知られていないことですが、トークが上手い人が多い。つい相手の趣味に触れてみたいと思ってしまいます。
重ねて言いますが私の所感ではあるものの、世で言われているほど付き合いにくい人ではないことは強調したいです。
<概要>
発達障害と犯罪に直接の関係はない。しかし、発達障害をもつ子どもの特性が、彼らを犯罪の世界に引き込んでしまう傾向があることは否めない。そんな負の連鎖を断ち切るためには何が必要なのか。矯正施設、加害者になってしまった少年たち、彼らを支援する精神科医、特別支援教育の現場など、関係者を徹底取材。敢えてタブーに切り込み、「見たくない事実」を正面から見据えて問題解決の方策を提示する。