超!エンジョイ!

お久しぶりですこんばんは。

決してさぼっていたわけではないのですが、なかなか顔を出せずにごめんなさい。また本の読めない時期に入っていて、ちょっとまごまごしていたのです。ごめんね!

 

さて、いきなりですが、世の中の小説はだいたい四種類くらいに分けられるかと思います。こんな感じに。

 

1 使命感に駆られて書いた本 (プロレタリア文学なんかが代表ですね)

2 原稿料のために書いた本 (そして往々に締め切りにも追われている)

3 長編作品を書くため、試験的に書いた短めの本 (村上春樹なんかこういう本が多いですね)

4 めっちゃ趣味を詰め込んだ本

 

たぶん広い目で見たらもっと分類されるんでしょうが、私の独断と偏見ではこんな感じかと思います。

多分この中で、読み応えのある本が1,あまり面白くないのが2,ファンにとってうれしいのが3,そして読んでいて楽しいのが4ではないでしょうか。どうでしょうか。

 

というわけで、今回は作者が趣味を煮詰めて作った小説をご紹介しようと思います!

 

 

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というわけで今回ご紹介するのはこちら! 綾辻行人さんで「迷路館の殺人」です!

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このブログで「館」シリーズをご紹介するのは「水車館の殺人」に引き続き二回目ですね。

 

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館シリーズとはなんぞや?という人のためにおさらい。

作者はモルカーおじさんこと綾辻行人さん。彼は1987年に「十角館の殺人」でデビューし、それからタイトルに「館」を冠する一連の作品を書くようになりました。それが「館シリーズ」です。

主人公はおおむね島田潔というミステリマニア。彼はワケありで中村青司という建築家の建物を追っかけています。そしてその館に首を突っ込んでは事件に巻き込まれ、いっちょ前の顔をして素人探偵を始める――という内容。

 

そして中村青司の作る建物には、だいたいトリッキーな仕掛けが仕掛けられいます。それは水車館にもありましたね(あまり書くとネタバレに直結するので控えますが)。

この仕掛けこそ館シリーズの謎を解くカギになりますので、どんな仕掛けがあるのか推理しながら読んでみましょう!

 

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さてはて、今回の迷路館です。

今回はなんと、建物自体が地下に埋まっていて、さらに廊下が迷路になっています。そして部屋のプレートにはアリアドネの糸の神話に関係する神々の名前が書かれてます。

今回の館の持ち主は大御所ミステリ作家。彼の酔狂により館に弟子作家たちが集められたが、いざパーティーが始まろうとしているときに、なんと持ち主がなくなってしまう。そして彼の遺言から、ウン億円という懸賞金をかけたミステリ小説バトルが始まるのです!

……と書くと突拍子もないのですが、実際この大御所作家は変人なのでしょうがないです。俺の遺産?ほしけりゃくれてやる!一番面白いミステリ小説を書いたやつにな!というノリです。本当に。

こんな顛末で迷路館に閉じ込められて小説を書くことになった四人の作家。しかし、そんな中で残虐な殺人事件が起きてしまう!

 

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カンのいい方なら「もしや」と思ったかもしれませんが、そうです。この作品、「額縁小説」なのです。

ようするに「作中作」ですね。本格ミステリではめずらしい構成だと思うのですが、私の知見が広くないので、めずらしくもなんともなかったらごめんなさい。

そう。この作品、「鹿谷門実という作家が体験に基づき書いて稀譚社ノベルスという出版社から出た小説」が舞台の小説なんです。ややこしいんですけど。

さらにこの小説(綾辻行人さんの書いた、本物のほう)のすごいところは、読んでいる間に「作中作であることを忘れてしまう」ことにあるかと思います。

こういう作品のよくあるパターンとして、話の区切りがいいポイントで「この小説を読んでいる読者」が出てきて作品の良しあしをあれこれ言うのがあるんですけど、この作品にはそれがまったくない。しかも、これまでの館シリーズを読んでいるかたならなおのこと、この設定が館シリーズのド定番なのもわかりますから、余計に作中作の匂いがしないのです。

 

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さらに悔しいのが、綾辻行人さんがこれを当時めちゃくちゃ楽しんで書いたことがわかることです。

どこがどう、と言葉に表すのは難しいですが、小説の端々に若々しいパッションがあふれているのですね。キャラクターが生き生きしていることもそうでしょうし、迷路館のてんこ盛りな設定(地下にあるだけじゃなく迷路になっているし、ドアには意味深のルームネームがつけられ、さらに壁には不気味な仮面が貼ってある。しかも中村青司の作品である)もそうでしょうし、四人の弟子作家が「ミステリなんかすぐ書けねえよどうしよう」と苦悩しているリアルすぎる姿もそうでしょう。

とにもかくにも、「俺の楽しいやつぜんぶ詰め込んでやったぜ!」と全力で叫んでいる作品なわけです。この作品を書いた作者は当時二十七歳。広瀬アリスさんと同い年ですよ(2022年現在)。そりゃパッションであふれるわ。

 

ちなみに、この作品は本当に楽しんで書かれていたのだと新装版のあとがきで判明しています。しかもさらなる長編作品に書き直すつもりでもあったそうです。どんだけ気に入ってるの。ここまで思い入れがあるとわかると、よりこの作品が大好きになってしまいますね!

 

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余談。

作中で主人公の島田潔がしきりに折り紙をする姿が見られますね。今回折っているのは悪魔です。

しかし一枚の紙から悪魔なんて複雑なもの折れるのか?と疑問に思いますよね。

折れるんです。

この本の解説に折り方も掲載されていますので、島田潔な感じを味わいたいかたはぜひ折ってみてくださいね!めちゃんこ難しいですよ!

 

それではみなさんこのへんで。お読みいただきありがとうございました!

 

 

 

 

 

 

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以下リンクです。

迷路館の殺人 (講談社文庫): 綾辻 行人 + 配送料無料 (amazon.co.jp)

 

あらすじ

 

奇妙奇天烈な地下の館、迷路館。招かれた4人の作家たちは莫大な“賞金”をかけて、この館を舞台にした推理小説の競作を始めるが、それは恐るべき連続殺人劇の開幕でもあった! 周到な企みと徹底的な遊び心でミステリファンを驚喜させたシリーズ第3作、待望の新装改訂版。初期「新本格」を象徴する傑作!


密室と化した地下迷宮で繰り広げられる連続「見立て殺人」!