図書館の利用者は

 

だいたい老人と子供

なんですよ、ここだけの話。

というわけでごきげんよう。元司書から、公共図書館の利用者事情の暴露から始まりました。

大学や大企業が近所にある図書館なら違うのかもしれませんが、うちの町のようなちっちゃい図書館の利用者は本当にご老人と子供です。しかもただのご老人じゃない。ヨボヨボのおじいちゃんおばあちゃんです。「この歳で本が読めるんだすげえ」と尊敬してしまうような年齢の人たちです。半分くらいはお昼寝しているのですが(家で寝てください)、もう半分はきちんと読んでます。

 

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じゃあ世の中の読書シルバー層って何歳まで読書を続ける気なんだろう?と気になるところです。なにせ80歳の8割くらいが白内障にかかって視力が低下すると言われています。本を読み切る体力だって心もとないはず。大活字本というものもあるにはありますが、べらぼうに高いし出版数が極端に少ない。どうするんでしょう?

 

そんな素朴な疑問にダイレクトに答えた本がこちらです。轡田隆史さんで「100歳まで読書」です。

 

 

えええ100歳!?

 

「日本人総100歳時代」到来とはいえ、大半は寝たきり&認知症でてんやわんやな令和の時代に、100歳まで読書なさるおつもり!?どれだけ体力に自信あるの、こわ……

 

と思いますが、この著者の経歴を見れば、「ああこの人ならあるいは」と思えます。あの大ベストセラー「考える力をつける本」の著者であり、この界隈では有名な読書家です。本人は謙遜していますが、蔵書は3万冊。うちの図書館がだいたい10万冊だったので、一つの図書館の3割くらい個人で持っているということになります。こわ……

 

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とはいえさすがの轡田さんとはいえ、やはりすべてを読み通す元気はない様子。そりゃそうでしょう。一冊読み切るって若い子でも相当のエネルギーいりますもん。私だってこうしてブログをしたためていますが、大体5~8冊くらいを併読してますから。

さて、(刊行時)齢八十ちょっとだった轡田さんはどんな風に読んでいるのでしょう。

 

それが、拾い読みです。

 

拾い読みこそ老人読書の至高にして必須のスキルだそう。

さすがにこの歳になろうものなら、真新しい本をすべて読み通すのは骨なので、既読の本の好きなところを好きなだけ読んでしまおうぜ、というスタンスです。若いころ読んだ本を年老いてから「拾い読み」してちょこっと新しい発見をする。それこそ至高の読書だそうです。ううむ、そうなんですね。まだナウなヤングでトレンヂーの自覚がある私では、まだその境地にいけなさそうです。私は読んだことない本も読みたいですもん。

 

ここで一つ疑問が。

拾い読みに一番いい本ってなんだ?

無問題。これについても轡田さんはきちんと答えてくれています。なんなら画像も貼っちゃいましょ。ぺたっ。

 

 

歳時記やんけ!

 

今回角川さんの歳時記を貼りましたが、歳時記ならお好きなもので大丈夫だと勝手に思ってます。だって轡田さんはほかの歳時記を紹介していますが、その本、入手困難なんですもん。

気分にあわせて歳時記を「ぱらぱら~」とさせ、目についたところを「パッ」とみる。そうすれば、例えば「春」のページには「猫の恋」なんて書かれている。そうね、猫って春になると発情するものね、だからニャーニャーめっちゃ鳴くようになるのよね、だなんて思いをはせる。ね、いいでしょう?

読書なんてそんなもんでええんやで、と轡田さんは言います。フマジメだってイイカゲンだって読書のうちです。ハードルなんて低いに越したことないんですから、好きなように読んじゃいましょう。

 

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そしてもうひとつ大事なのが、「食わず嫌い」をなくすこと。

例として轡田さんが挙げているのは村上春樹です。きっとここで何名かが「あー……」ってなりましたよね。

そう、村上春樹は「食わず嫌いされる著者ナンバーワン」なのです(ぽんぽこ調べ)。しかも高齢の人あたりから毛嫌いされる傾向がある印象です。アメリカかぶれのオシャレ(笑)な作家、若者にちやほやされてる(笑)作家。みたいなイメージ持たれてる気がしてなりません。

でも、そんなのやめようぜ!とりあえず読んでみようぜ!というのが轡田さんの主張です。

大人になればなるほど、食わず嫌いというのは増えていくものです。私くらいの年だって、若い子に大人気な「なろう系」「転生もの」に嫌悪感を示す人も多いです。でも、それってもったいない!だって転生もの面白いもん!超好きです!

 

こんな感じで、この世の中には、たくさんのまだ見ぬ面白い本がたくさんあります。「わしゃこんなチャラチャラしたもの読まん」「最近の若いやつは」と食わず嫌いになる前に、一回読んでみてはいかがでしょう。思わぬ当たりがありますよ!

 

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しかし読んでみてひしひし感じるのは、轡田さんの読書への愛情です。

この本を読んでみればわかるかと思うのですが、隅から隅まで「読書めっちゃ楽しい!活字大好き!」というパッションが伝わってくるのです。圧を感じるくらいです。ええ、マジで。

しかし、八十オーバーまでこのパッションを維持できている秘訣こそ、読書なのではと思うわけです。

読書はいつでも新しい発見をくれるわけですし、新しい世界も見せてくれます。

その小さな積み重ねこそ、心を若く保つ秘訣なのかもしれませんね。

 

でもどうせなら心だけじゃなく身体も若返りたいところだなあ、と哀切を添えた感想を述べつつ、今回はこのへんで。お読みいただきありがとうございました!

 

 

 

 

 

 

 

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以下リンクです。

100歳まで読書 (単行本) | 轡田 隆史 |本 | 通販 | Amazon

 

内容

 

100万部突破の大ベストセラー『「考える力」をつける本』の著者にして
稀代の読書家がユーモラスに提案する――「死ぬまで本を読む」知的生活のヒント

年を取ると、たしかに読書はちょっと大変だ。
文字は読みにくくなるし、集中力も長くはつづかない。
時間だって、意外と思うように取れないことも多い。
だから、ちょっとした工夫や発想転換が必要になってくる。
年を重ねたなりの、成熟した本の読み方、楽しみ方――。
そのヒントを、ぼくなりに提案できればと思う。――著者

◎本は最期まで人生のよき相談相手になってくれる
◎本の「拾い読み」こそ、極上の「暇つぶし」
◎いくつになっても、いい本との出会いは楽しい
◎たとえば、荷風を読むならこれ、鴎外を読むならこれ
◎日本人なら死ぬまでに一度は触れたい古典

……より深く、面白く、豊かに読書を味わい尽くす極意