※ビーンズ文庫ver
で今回はお送りしますよ!
というわけでこんにちは。みなさんビーンズ文庫ご存じですか?何年か前に真っ赤な背に変わったアレです。読書大好きな女の子が一度は手に取ったことがあるアレです。最近の有名どころでは浜千鳥さんの「悪役令嬢、ブラコンにジョブチェンジします」とか「文豪ストレイドッグス」のノベライズがありますね。個人的にビーンズ文庫で最近読んで好きだったのはシロヒさんの「陛下、心の声がだだ漏れです!」というラブコメですね。始終きゅんきゅんする感じがたまりませんでした。
え?じゃあ今回は少女小説を紹介するの?とお思いの方へ。
今回はおおむねは「そう」とも言えますし、でも完全に「そう」とも言えない作品です。そう、少女小説かどうか怪しいのです。ビーンズ文庫なのに。個人的には女の子も大好きな作品ではあるかと思うのですが、ほかの客層が重厚すぎてイエスと言いにくいんです。ビーンズ文庫なのに。
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ようするにこれです!有栖川有栖さんで「臨床犯罪学者・火村英生の推理Ⅳ スウェーデン館の謎」です!
もう一度言います。有栖川有栖さんの作品です。ビーンズ文庫です。
ネタを明かしますと、こちら1995年に講談社ノベルスで発売されていたのを他社の角川ビーンズ文庫で再販したものです。講談社文庫がわりとノベルス版の雰囲気を残している表紙に対し、角川さんは腐女子一点狙いのマーケティング作戦に出たわけですね。そして成功するんですよね。私みたいなのが買うから!
ちなみに内容は本家本元「スウェーデン館の謎」と一切変わりません。ただ麻々原絵里依さんの挿絵とともに楽しめるかどうかの違いです。挿絵がいらない方は講談社文庫版、挿絵も楽しみたい方はビーンズ文庫版を読むのをお勧めします。
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内容に触れる前に有栖川有栖さん作品の余談を。
実はこの作家アリスシリーズ、非常に二次創作が活発なシリーズでもあります。おそらくほかの新本格ミステリの中で断トツに薄い本の数が多いのではないでしょうか。駿河屋やとらのあなでも専用のコーナーが設けられているほどで、私が知らないだけで、きっとオンリーイベントとかもやっているのでは、と思うほどの数です。
なぜか。
勝手な考察なのですが、ワトソン役のアリスと火村の関係が非常に……なんというか……腐女子が大好きな空気感だからかと。
ホームズとワトソンの関係も世界の腐女子に大人気ですが、彼らよりもっとフランクで砕けた二人の関係が日本の腐女子にドストライクだったのでしょう。それにアリスは関西弁だし。これ重要です。日本の腐女子は関西弁男子に激よわなのです。私も大好きですし、関西弁。なんかいいですよね、関西弁。
ちなみになんですが、世間は圧倒的火村×アリスが優勢です。私も火アリ大好きです。
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肝心の中身はどんな感じなのか。
小説の取材のために山奥のペンションに訪れることになったアリスは、そこでひょんなことからブロンド美女と知り合いになる。なんでも彼女はペンションの隣のログハウスの住民とのことで、アリスもその家に招かれることに。
そこにいたのはブロンド美女の夫である童話作家のオッサン(ちょっとアザラシに似ている)、ブロンド美女の父と童話作家の母といとこ、ある会社の社長と、童話作家の作品の挿絵をつとめた美人画家の姉妹。アリスはそのメンバーと知り合い、打ち解けます。特に同じ作家同士である童話作家のオッサンに対しては親近感を抱いている様子。
だが、アリスが帰ったその夜に、なんとログハウスで殺人事件が起きてしまいます。
急遽アリスは火村を呼び寄せ、二人で調査をすることに――というお話。
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今回キモになってくるのは、ずばり「雪の中の足跡」の謎です。
まさに密室殺人の定番、殺人が起きてそこに雪が降っていたらもう足跡トリックしかありえません。今回も豪雪の中、犯人と思しき足跡はなく、部外犯なのかどうかもわからない状況。個人的には江戸川乱歩の「何者」を思い出すのですが、みなさんはどうでしょうか。コナンにも何回か出てきましたよね、たしか。
ちなみにこのログハウス、通称スウェーデン館なんですが、綾辻行人さんの「館シリーズ」のようにトリッキーな仕掛けがあるわけではありません。普通のちょっと大きな屋敷だと考えてくださるとよいです。そのため、本編には館の見取り図もついていません。大事なのは殺人現場周辺の足跡です。
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ちなみにこのビーンズ文庫版には、なんとキャラ紹介が載っているのです。これはありがたい!よくミステリにある、人物の名前と仕事名だけが書かれているものよりはるかにわかりやすいです。この作品、結構な人数の登場人物が出てきますしね。
なお、アリスのところには「関西弁が標準仕様」と紹介されています。何も間違っていないのに何か違うような気がする……でもやっぱり間違っちゃいないんですよね……火村は普通のことが書かれているのに……笑
そして気のせいでなければ、火村よりアリスのほうが身長が小さく描かれていますね。麻々原さんとてもよくわかってらっしゃる!本当にありがとうございます!
……と、本当の作家アリスシリーズのファンから怒られそうな感想を綴りつつ、今回はこのへんで。お読みいただきありがとうございました!
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以下リンクです。
臨床犯罪学者・火村英生の推理 (4) スウェーデン館の謎 (角川ビーンズ文庫) | 有栖川 有栖, 麻々原 絵里依 |本 | 通販 | Amazon
内容
取材で会津・裏磐梯を訪れた有栖は、湖に身を投げんとする美しい金髪の女性を助ける。それは勘違いだったが、その縁で、彼女の住む「スウェーデン館」と呼ばれるログハウスに招かれることになり……。