仮面の男

って、なんだかミステリアスな感じがしませんか?

例えば仮面の男界ナンバーワンの色男と言っても過言ではないシャア・アズナブル少佐、そのあとに続く鉄仮面やミスター・ブシドーを代表としたガンダムシリーズの仮面イケメンたち。ほかには大御所・犬神家の一族からスケキヨ。海外からのクラシック、オペラ座の怪人のエリック。変わり種だとサウンドホライズンの「エルの楽園」でもおなじみです。私の一番好きなシリーズです。ああ、彼女の背後には、仮面の男が立っていた……

 

と、まあ私の数少ない「仮面の男」引き出しはさておき。本題に向かいましょう!

 

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なんでいきなりこんな仮面の話をしたかと言いますと、今回は仮面の男がキーを握る小説をご紹介するからです。綾辻行人さんで「水車館の殺人」です!

 

 

こちらは大人気シリーズ「館シリーズ」の第二作です。和製国名シリーズの有栖川有栖さんと対をなす、現代の本格ミステリの二大巨匠ですね。

 

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しかし今になってなぜこの作品。名作なのはじゅうじゅう知られているのに、と思われる方もいらっしゃるかもしれないですね。

理由はふたつ。

 

・現在進行形で綾辻さんが館シリーズの新刊を執筆中で、その新作を読む前におさらいをしておきたかったから

・モルカー二期がやるから

 

モルカー関係なくない?と考えたそこのあなた!大いに関係があります!

なにを隠そう綾辻さんは、日本で一番有名なモルカニスト(モルカーファンのこと。ぽんぽこの造語)なのです!

もっというと、奥様お手製のモルカーたちとともに日常を過ごすだけでなく、友人の京極夏彦さんや法月綸太郎さん、有栖川有栖さんの家に連れていき布教しまくり、ほぼ毎日モルカーたちの写真をTwitterにアップしているのです!これをモルカニストと言わずしてなんと言う!

(ちなみに奥様は「屍鬼」などで有名な小野不由美さんです

 

というわけで(?)、モルカー二期記念に偉大なるモルカニスト様の著作を見てみよう、ということです。

 

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館シリーズといえば真っ先に「十角館」や「暗黒館」が思いつくかと思いますが、そちらはまたいずれご紹介するとして、今回は「水車館」にお邪魔してみましょう。

 

施工者は中村青司。ほかにも数々の素敵な「館」を手掛けるホットな建築家でしたが今は消息不明。彼の手がける「館」には、忍者もびっくりな「からくり」が仕込まれているのが特徴です。

そしてそんな中村青司の建物を理由あって追いかける主人公の島田潔。今作でも、中村青司の名前に引き寄せられるようにこの建物に、招かれざる客としてやってきました。

この館に暮らすのは仮面の男と幼な妻。だけれどこの館では、ほんの一年前に凄惨な事件があったばかりだった――

 

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あまり語るとネタバレに触れてしまうのがミステリという読み物。とくに綾辻さんの作品はその傾向が強いので、慎重に語りますね!

この物語のキモはやはり一年前の事件、「客に来ていた生臭坊主が館の居候を殺害して消えた」ことです。この生臭坊主は高価な絵を盗んだうえで当時勤めていた家政婦と居候を殺害したのち、跡形もなく消えてしまったのです。この事件がうやむやになってきたところで現れたのが島田潔。なんとこの男「なんかあの坊主が犯人じゃない気がするんだよね」みたいなノリで事件をほじくり返します。ひと様の家でなにしとんねん

 

キーマンは家主の藤沼紀一、くだんの「仮面の男」です。ゴム製のデスマスクをつけているのは、事故のためめちゃめちゃになった顔を隠すため。偉大な絵描きだった父亡き今、紀一は幼な妻とともに「水車館」で孤独な人生を歩んでいます。そう、事故で顔がめちゃめちゃになったために……

そんな紀一が仮面の奥に潜ませている表情はどんなものなのか。文章上では彼はほとんど表情を動かさない分、余計に不気味で魅力的ですね。

 

そして現代を舞台にして起こってしまう第二の事件。まるで前の事件をなぞったかのように殺された家政婦から始まる一連の事件が一年前の事件とどう関係しているのか。もちろん関係していないわけではないはずなのに、どうしてかその手掛かりがつかめない――というもどかしさを味わっていただければ幸いです。

 

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ここからは本当に余談なんですが、ミステリ界隈における最近の流行りは「人間味のある名探偵」だと思うんですが、このころの流行りは「人間味のない名探偵」だったのかな、と思います。

最近は「紅蓮館の殺人」でおなじみのメンタルお豆腐系名探偵葛城君や「屍人荘の殺人」でおなじみの姉御系名探偵比留子パイセン、「マツリカ」シリーズの女王様系名探偵マツリカ様など、名探偵じゃなくても面白いのに名探偵属性までつけられた最強面白可愛い名探偵が目白押しです。

対する新本格あたりの名探偵は、この「館シリーズ」の島田潔(島田荘司さんの御手洗潔がモティーフなんでしょうね)、有栖川有栖さんの火村教授もしくは江神さん、京極夏彦さんの京極堂などなど、非常に硬派で理知的なメンバーが勢ぞろいです。なんだか超有名古典のポアロさんやクイーン君、ブラウン神父とかを連想させますね。

さすがに30年以上過ぎればひとつ時代も変わるものですね。でも私はどっちの名探偵も大好きですけど!

 

なんて名探偵に思いをはせつつ今回はこの辺で。お読みいただきありがとうございました!

 

 

 

 

 

 

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以下リンクです。

 

水車館の殺人 (講談社文庫) | 綾辻 行人 |本 | 通販 | Amazon

 

 

あらすじ

仮面の当主と孤独な美少女が住まう異形の館、水車館。1年前の嵐の夜を悪夢に変えた不可解な惨劇が、今年も繰り返されるのか? 密室から消失した男の謎、そして幻想画家・藤沼一成の遺作「幻影群像」を巡る恐るべき秘密とは……!? 本格ミステリの復権を高らかに謳(うた)った「館」シリーズ第2弾、全面改訂の決定版!


「『十角館』に勝るとも劣らず衝撃的な作品」――有栖川有栖(本書解説より)