生きづらいこのご時世

コロナにウクライナ戦争と、今の世の中はいっそう先の見えない時代となっていますね。今までの常識が通用しないことほど、怖いものはありません。

というわけでごきげんよう。今回は少し真面目な本を取り上げるため、少し真面目な導入とさせていただきました。

今の私たちには考えるべきことがたくさんあります。ウクライナ戦争に関して私たちには何をするべきなのか(もしくはしないべきなのか)、ウィズコロナの時代でどのように生きればいいのか、もっと身近なところで言うと、止まらない物価高騰が私たちにどう影響してくるのか。私たちに求められるのは「知ること」だけにとどまりません。知った上でどう考え、行動につなげていくのか、それが肝心なのではないかと思うわけです。


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じゃあ早速行動しなきゃ!と無計画に動くことはただの無謀です。そのために必要なことは、「考えること」ではないでしょうか。

というわけで今回は「考える力」にフォーカスを当てた本をご紹介します。佐藤優さんで「読む力を鍛える」です。



え?考える力じゃなくて読む力なの?と疑問に思われる方も多いかと思います。

というのも、実のところ佐藤優さんの本にはタイトル詐欺が横行していまして、過去にも「本は三冊同時に読みなさい」というタイトルで、読書術の本と思わせて実際は書評集、というトンデモ事件が話題になっていました。まあ、往々にしてそういうことがあるので悪しからず。


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さて、本題に。

こちらの本は大きく分けて二つの話題を取り扱っていて、一つは「百科事典の活用法」もう一つは「哲学と神学」の二本立てです。

哲学については主にヘーゲルを扱っているのですが、これがまた非常に難しい内容となっています。ある程度レベルの高い西洋哲学の知識が求められます。ヘボヘボ知識しかない私も当然全てを理解しているわけではなく(悔しいですけどね)、今回はヘーゲルたちには触れずにお話していこうと思います。


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まずこの本の基本理念から。

この本、というより佐藤優さんのスタンスとして「体系知」というのがあります。なんぞそれ?と思われる方も多いかもしれません。ゴリゴリに噛み砕いて言うのなら「百科事典のようなもの」となりましょうか。知識同士の関わり合いのようなものです。

相反する言葉には「集合知」というものがあります。こちらは一人一人の経験や知識を集めればすごいものが生まれるよね、という発想で、ここから生まれたのが「Wikipedia」です。

私としてはどちらも良し悪しかなと思ってはいるのですが、佐藤さんは圧倒的に「体系知」、すなわち百科事典の利用を推奨しています。

どうしてでしょう。


言うまでもなく百科事典は出版物です。ということは、間に編集者という専門家がいます。その専門家にはもちろん体系的な知識が求められますし、その人が編集の責任をとってくれるわけです。つまり「誰かが内容に責任を持ってくれている」ということですね。

一方Wikipediaは世界中の誰もが編集権を持っている、すなわち誰でも書き込めるわけです。それは非常に便利なことですし、実際ドイツ語やチェコ語の項目、特に哲学や歴史なんかについては非常にいい記事になっています。ですが、問題は我らが日本の項目。「荒らし」という文化のせいでとんでも記事が横行し、信用うんぬんを通り越してはちゃめちゃになりつつあります。

ということで、佐藤さんは百科事典の利用を推奨しているのです。何を学ぶにしても基本を押さえてから、その基本は百科事典から、ということですね。


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では、その体系知が具体的にどう役立つのでしょう。

それをこの本では「ヘーゲル」を例に挙げて説明しているのです。何を隠そう、この本の基本理念であった「体系知」というのは「ヘーゲルの哲学体系」のこと。要するに佐藤さんの主張はヘーゲルを下敷きにしていたわけですね。


じゃあヘーゲルを身につけるとどうなるのか。詳しいことはすっ飛ばしてしまいますが、さまざまな角度から物事を見ることができるのです。

ヘーゲルは一つの物事に対して「こんな見方もあるけど、別の角度から見ればこうなるよね」を繰り返して考えていました。この見方こそ、「さまざまな角度から物事を見る力」になるわけです。

つまるところ「絶対的な考えなんかないんだよ」というわけですね。


この考え方が一つ身につくだけで、私たちの「考える力」は一つレベルアップするのです。

そしてその力は、苦しい現状を打破してくれる切り札にもなるかもしれません。


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とまあ、壮大なことを言ってきましたが、ここいらで総括しますと、こんな感じになります。


・百科事典を読んで体系的な知識を

・その知識を縦横に広げていけば、必ず血肉になる知識は身につく。

・その力を駆使して、社会をより良く生きていく必要がある


と、まとめてもちょっと難しいことになってしまいました。難しい内容となってしまったので、やっぱりこの本を実際に読まれることをおすすめします。

結局「読む力」について全然語ってねえじゃん!と改めて突っ込みつつ、このへんで失礼します。読んでくださりありがとうございます!







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以下リンクです。




内容

「読む力」は表現力の基本。
「読む力」以上の「聞く力」「話す力」「書く力」を持つ人はいない。


本書では、“佐藤優をつくった"百科事典の使い方、哲学書はどうやって読むか、Wikipediaなどネット情報との付き合い方、使い方を徹底的に解説する。


◎情報が氾濫するネット社会で、世界を多元的に見る、知の使い方
・哲学書をどう読み進めるか
・必ずしも原著を読む必要はない
・哲学者の社会への視点をつかむ
・現実世界は常に「運動」している
・社会生活の悩みにヘーゲルを生かす ……


こういう時代状況に歯止めをかけることができるのは、古典的な啓蒙だと思う。ポストモダニズムの流行以後、私たちが軽視していた旧来型の教養を取り戻さなければならない。(本書「まえがき」より)