しもしも生首ぃ〜?
いや聞くってそういう意味じゃねえから!
というわけでお久しぶりですこんにちは。今回は前回に引き続きミステリ作品を紹介しようと思います。
というわけで早速本題へ! 今回は法月綸太郎の「生首に聞いてみろ」です。
表紙こっわ。
この女の子めちゃくちゃ瞳孔ガン開きじゃないですか。驚いているのか、すでに死にかけなのか。
ちなみに左の方に意味深においてある薔薇ですが、こちらは驚くなかれ、あまり本編と関係ありません。どっちかといえば「女の子に襲いくる不吉な事件」のメタファーでしょうか。
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さて、作家さんの法月綸太郎について少し。
この方はいわゆる新本格ミステリ作家の一人です。
新本格といえば他に絢辻行人や有栖川有栖が有名ですね。彼らと同時期にデビューしたのが、この法月倫太郎です。ちなみに三人とも京都大のミス研出身という共通点もありますね。
ちなみに新本格といえば、謎のトリックやロジックを重視する作品群のこと。いわゆる「本格ミステリ」と呼ばれる作品たちをリスペクトしたものが多いのも特徴です。余談ですが乱歩の後期作品のような耽美でちょっとエッチな作品は変格ミステリと言われます。あれもミステリなんだ……。
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さてさてこの作品について。
今回の主人公は作者と同じ名前の法月綸太郎さん。30半ばを過ぎたしがない作家のようです。父親は警視なこともあるのか、度々事件に巻き込まれているようです。
今回のキーマンは綸太郎の友人、川島敦志とその姪の江知佳、そして江知佳の父親で有名な彫刻家の川島伊作。伊作の遺作である石膏像の首が切断されたということで、敦志は綸太郎に捜査を依頼することに。なんでもその石膏像のモデルは江知佳であり、敦志はそれを「江知佳への殺害予告」と解釈したためです。普通に綸太郎に荷が重すぎないか?
しかし綸太郎はいいやつなので承諾、早速捜査に乗り出します。その石膏像というのはナマの人間から型を取り出した作りのもので、もちろん江知佳そっくり。その首には元々首がなかったと主張する人間、いや違う●●が(ネタバレ防止)切って持ち去ったんだ、などなど憶測が飛び交うなか、とうとう江知佳が殺されてしまいます。しかも、伊作の追悼展に生首を送りつけられて……。
犯人は本当に江知佳に付き纏っていたストーカー野郎なのか? はてまた姿を消したキュレーターなのか? それとも全部ブラフか? 時々メタ読みしながら読み進めていくと、出るわ出るわ新事実。どんどん翻弄されてどこに連れていかれるのか戸惑っていると、もう綸太郎は真相にたどり着いている。一杯食わされた! と読者は膝を叩くまでがお約束。これぞ新本格の醍醐味! 余すところなく堪能しましょう。
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ちなみにこの作品、500ページ超えの大長編ですが、肝心の殺人事件が起こるのは半分まで読み進めた頃です。それまでずっと石膏の首を追いかけていて、しかも展開が非常にのんびりなのでついつい焦ったくなってしまいます。
ですが前半を読み飛ばすなんて言語道断。前半にもきっちり伏線が張り巡らされていて、キーマンも続々と登場し、そこをじっくり読まないと真相には辿り着けません。
さっさと殺人事件まで飛ばしたくなるお気持ちはわかりますが、これも美味しい真相のため、腰を据えてじっくり取り掛かりましょう。
ちなみに私は話半分で前半を読んでいたため、後半であたふたと読み返すはめになりました。みなさんはこんな失敗しないでね! それでは!
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以下リンクです。
あらすじ
著名な彫刻家・川島伊作が病死した。彼が倒れる直前に完成させた、娘の江知佳をモデルにした石膏像の首が切り取られ、持ち去られてしまう。悪質ないたずらなのか、それとも江知佳への殺人予告か。三転四転する謎に迫る名探偵・法月綸太郎の推理は――!? 幾重にも絡んだ悲劇の幕が、いま開く!! 構想15年。著者渾身の長編本格ミステリ! 第5回本格ミステリ大賞受賞作!