やっぱコーヒーだわ
というわけでお久しぶりです。バタバタしていてお顔を出せませんでした。
ところでみなさん、紅茶派ですか?コーヒー派ですか?
私は断然コーヒー派ですねぇ。豆から買って挽いて淹れるほど好きです。おやつのときもコーヒーと決めています。コーヒー飲みながらの読書はたまらんです。
さて、導入はその辺にしておき、本のご紹介をば。
今回は岡崎琢磨さんの「珈琲店タレーランの事件簿」をご紹介します。
この表紙からたまらんでしょ!
こういう純喫茶な感じ、いいですね。エスプレッソマシンの背中に伝票ですよ!これですよ!分かってますねイラストレーターさんもデザイナーさんも!
灰皿があるってことは、分煙か喫煙可な喫茶店なんですかね。最近減ってきた昔ながらの喫茶店って感じが!また!あのタバコ臭い店内もマニアにはたまらんもんですよ。(個人差あります)
それにカウンターがよく磨かれていて、お店への愛も感じられますね!いやあいいなあこの表紙!
そろそろ中身もご紹介を。
主人公は美味いコーヒーを求めるアオヤマ青年。かなりコーヒーにはこだわりがあるらしく、普段からかなりいろいろな喫茶店を渡り歩いているのをほのめかす描写があります。
ちなみに主人公の内面の描写はほとんどなく、外見もほとんど不明。アオヤマ青年の人物像をご自由に想像しながら読めるのも、この作品の醍醐味なんですよね。
ヒロインは切間美星。「珈琲店タレーラン」のバリスタです。アオヤマより1歳年上らしく、少しお姉さんぶるところもありますが、大人しく聡明なお嬢さんです。
バリスタとは、コーヒーを淹れるお仕事をしている人のこと。ようするにコーヒーの専門家です。最近はスタバでも「バリスタ」という職位があるため、この界隈では常識な言葉となっていますね。
物語はアオヤマ青年が元カノに投げられるシーンから始めります。
傷心のアオヤマがたどり着いた場所がタレーランでした。そこで美星のコーヒーと運命的な出会いを果たしていると、元カノから電話が。ーー「どこにいるの?」
ちょっとしたホラー。
財布というイニシアチブを元カノに握られていることに気づいたアオヤマ青年。財布を取り返すべく、電話番号とメールアドレスを走り書きして無銭飲食、もとい後払いですっ飛んでいきました。
それが、アオヤマ青年と美星の出会いです。
そこから2人は様々な謎を巡り、仲を深めていきます。アオヤマ青年は美星の不思議な魅力に惹かれていき、美星もアオヤマ青年のことを憎からず思っている様子。にもかかわらず、美星はアオヤマ青年と一定の距離を保とうとしていて、アオヤマ青年もそれに気づいています。その最大の謎が、物語の大詰めになっていくのです。
この作品のもう1つの特徴として、謎がわりと簡単なところがあります。
ゆえに骨太なミステリに慣れた方だと「この程度の謎でミステリを名乗るなんて!」と憤慨された方もいたそうです。事実、解説の北原尚彦さんも「惜しむらくは個々のミステリ要素が弱かったのである」とぼそを噛んでいます。
一見それは欠点のように思えますが、私としては、そこもこの作品の魅力だと考えています。
例えばミステリ初心者の方とか、そういった方がとっつきやすいのが大きな強みではありませんか。ミステリを読んだときの、あの「分かった!」という感覚。それを味わってこそ、ミステリを楽しめる扉ではないでしょうか。
そんな成功体験が積める、いい腕ならしの作品だと思っています。
(というより、読書慣れしていない方がいきなりクリスティやらクイーンやら読んでも挫折するばかりだと思いますので)
余談ですが、この作品の登場人物たちのほとんどは、コーヒー豆からとられています。
例えばアオヤマは、言わずと知れたブルーマウンテンから。美星はキリマンジャロ。マスターも藻川さんはモカ・マタリ。途中で出てくるキャラクターたちも、基本的には豆の名前です。
コーヒーをちょっとかじったことのある人なら、ニヤニヤしながら読めるのもこの本のいいところ。そこも合わせて楽しんでいただけばと思います。
以下リンクです。
内容
女性バリスタの趣味は――謎解き! 理想の珈琲を追い求める青年が、京都の一角にある珈琲店「タレーラン」で、のっぴきならない状況に巻き込まれて……。魅惑的な女性バリスタが解き明かす日常の謎の数々です。第10回『このミステリーがすごい! 』大賞最終候補作に、徹底的に手を入れて生まれ変わった、編集部推薦の「隠し玉」。