あなたの好きな人はどんな人?


と、いきなりの問いかけですこんばんは。

ずいぶんふんわりした問いかけですが、恋愛対象として解釈してください。ちなみに私の初恋の相手はポケモンのフシギソウでした。人間じゃねえ!

※参考画像

まあ私のことはさておき、みなさんも多種多様な答えがあるかと思います。
過去リア友に私が問いかけたときの返答はこんな感じでした。

クラスメートのあの人
毎日同じ電車に乗ってくる人
画面の向こうの推し
通勤途中にある幼稚園に通う女の子

一人だけヤバいやついるぅ!!



さて、今回ご紹介する本は、村田沙耶香さんの「ハコブネ」です。

村田沙耶香さんといえば「コンビニ人間」という作品が有名ですね。ご自身もコンビニ店員であることも知られています。
一部の界隈では「クレイジーさやか」と親しまれていて、実際それなりに尋常ではないお人だそう。
たとえば、

コンビニ勤務中オッサンに抱きつかれても抵抗せずされるままになっていた
それは世間からセクハラ扱いを受けたくなかったからで、上司に報告していない
なんなら嫌悪感すらなかった

私が知っているだけでこんな感じです。



この話に出てくる主な人間は3人。

1人目の里帆は自分の性に自身の持てない女の子
2人目の知佳子は人間感覚や肉体感覚という概念が希薄な子
3人目の椿はそんな2人の友人



里帆は男性との性行為があまりにしんどくて、「それは自分が女じゃないからでは?」という発想に至ります。そして里帆は、
男装
を始めました。そうやって、「第二次性徴のやりなおし」をしようとしたのです。

里帆について掘り下げていきますね。
やっぱり自分の性に自信の無い里帆は、バ先の可愛い女の子と寝たり、片っ端から無性(Xジェンダー)について調べたり、椿と寝たり、まあいろいろ試しました。たまに椿にド叱られつつ、知佳子にゆるーく励まされつつも、里帆はある答えにたどり着きます。それはぜひ見届けてくださいね。



2人目の主人公である知佳子は、宇宙大好きな祖父の影響で、かなりスピリチュアルな思考の持ち主です。
太陽のことを「ソル」と呼び、地球のことは「アース」と呼ぶ知佳子。アースと自分との境界線はほとんど感じられなくて、「自分ってもしや脳みそのついた石ころでは?」と疑うことも。水は星の中をくぐり抜けていき、自分を通して巡っていき、循環していく……と、かなり独特な思考回路の持ち主です。
そんな知佳子ですから、初潮が来たときも「液体が染み出していく」と半ば他人事のように思い、女としての生々しさとは遠いところにいました。経血は「」で子宮は「丸い空洞」。そう知佳子は感じています。

そんな「肉体とは?」と考え続けた知佳子も三十路になり、いい人に出会いました。その人は穏やかで上品な男性。知佳子も憎からず思い、お付き合いすることになりました。

その結果どうなったのか。ちゃんと知佳子は「肉体感覚」を得ることができたのか。それも読んでからのお楽しみということで。




ところでスピリチュアル界隈にこんなお話があることはご存知でしょうか。

「私」も、「私が見ている世界」も、ぜんぶ幻想にすぎない。
この世はリアルな世界を脳が情報処理した結果なのだ。

近年この考えが量子物理学的に認められつつあるそうです。
だとすると、私とか世界とかって何なんでしょうね。里帆の性の悩みも、知佳子の欲する肉体感覚も幻なのでしょうか。

なんてことを考えつつ、今日はこのあたりで。







以下リンクです。




内容
セックスが辛く、もしかしたら自分は男なのではと思い、男装をするフリーターの里帆。そんな曖昧な里帆を責める椿は、暗闇でも日焼け止めを欠かさず肉体を丁寧にケアする。二人の感覚すら共有できない知佳子は、生身の男性と寝ても人間としての肉体感覚が持てないでいた―。十九歳の里帆と二人の“アラサー”女性。三人が乗る「ハコブネ」は、セクシャリティーという海を漂流する。