女って強え


突然ですが男性のみなさん、どんな女子が好みですか?

守ってあげたいヒロインタイプ?それともグイグイ引っ張る姉さんタイプ?2次元ならツンデレやヤンデレもいいかもしれませんね。3次元だとめんどくさいですが。

ちなみに私は、かっこいい女性が好きですね。同性として憧れちゃいますね。あと戦う女が好きです。映画版バイオのアリスなんか最高です。




そんな「強い女に守ってもらいたい勢」のための小説を、今回はご紹介します。

ローリー・リン・ドラモンドの「あなたに不利な証拠として」です。



いいですねぇ、このポケミスならではの意味わからん表紙。まったく内容と関係ないんですよね。
ちなみに文庫版の表紙はこれとはまったく異なりますし、原書もまったく違います。並べられたら同じ本だとは思わないでしょうね。それが翻訳本の醍醐味さ!



さてこちらの本ですが、一言で内容を言ってしまえば、「強すぎる女警察官物語」です。

まあ出てくる女が例外なく強い。そらそうですよ。警察という男社会の中で生きてるわけですし、アメリカは日本と比べ物にならないくらい犯罪が悪質ですから。心身ともにマッチョでないとやっていけないのです。

5人の女警察官の短編が詰まった本作ですが、他の女もゴリゴリに強いです。「やだぁこわぁい守ってぇ」なんて言う女は一人もでません。なんなら警察官以外の女(遺族や通報者、被害者までもが)強いです。

かといって男が弱いわけではないのでご安心を。それに「女」だからって不当に貶める人間はほぼ出てきません。少なくとも警察官同士は認めあっている雰囲気です。そう思うと、アメリカのジェンダーフリーは進んでいるのかもしれませんね。


話が横道に逸れました。


5人の女たちが担当する事件はどれも凄惨です。グロテスクな死体にも平然と対応しなくてはならないし、悲惨な○された方をしたのを根掘り葉掘り調査しなくてはいけない。ときにはこちらが殉職することもありますし、誤射で一般人を○してしまうこともあります。(一応伏字にしました)

その様子が、この作品は生々しく克明に書かれているのです。それはもう、残酷なほどに。


そして警察も組織ですから、いろいろな人間がいます。何ぐせをつけてくる警部補都度都度嫌味を言ってくる同僚チャラい陽キャやおちこぼれのムードメーカー……。登場人物が多いので混乱しやすいですが、その誰もの個性が引き立っているので、人数のわりにわかりやすいです。

ちなみに私のイチオシ人物は後半に登場するチャラい陽キャのコーワンです。5回も離婚している懲りないバカ感が、いい感じにこの作品を緩めてくれている感じがして好感が持てますね。




さて、この小説のキーアイテムとして「銃」がよく登場します。
銃は銃社会アメリカにおいては、警察官にとって必須のアイテム。護身用にはもちろん、相手を威嚇することにも欠かせません。日本ではとても考えられないですが、アメリカの警察官は常に拳銃を常備しているのです。それこそプライベートのときも。アメリカの警察官にとって、銃は身体の一部なのです。

それだけ危険な現場で働く女たち。その勇姿はあまりにカッコよく、非常にハードボイルド。
そう、この小説はハードボイルド小説なのです!

レイモンド・チャンドラーやマイクル・コナリー、パトリシア・コーンウェルのファンである私がこの手の本を嫌うわけがなかったのです。ハードボイルドは男女問わずかっこい。なんなら女のハードボイルドはもっとかっこいいのです。

レイモンド・チャンドラーやマイクル・コナリー、パトリシア・コーンウェルについてはまたいつかご紹介しますね。めちゃくちゃいい作品が揃ってます。



ちなみにこの作品の特徴として、日本の警察小説にある「キャリア組ノンキャリ組の軋轢」がないのも挙げられます。
アメリカってそういうのないんですかね。私はあまりアメリカの警察小説って読まないので分からないのですが、その辺はどうなんでしょう。もっといろんな作品を読んで勉強してきます。

と、ちょっとしたカルチャーショックを噛み締めつつ筆を置きます。アデュー!





以下リンクです。



内容
警官を志望する若きキャシーがマージョリーと出会ったとき、彼女の胸にはステーキナイフが深々と突き刺さっていた。何者かが彼女を刺し、レイプしたのだ。怯え、傷ついた彼女を慰めるキャシー。だが捜査を担当したロビロ刑事は、事件を彼女の自作自演と断じる。マージョリーに友情めいた気持ちを抱いていたキャシーだったが、どうすることも出来なかった。それから六年後、キャシーとマージョリー、そしてロビロの運命が再び交わるまでは…MWA賞最優秀短篇賞受賞の「傷痕」をはじめ、男性社会の警察機構で生きる女性たちを描く十篇を収録。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀短篇賞受賞。