これは、アメリカ共和党の政権移行後の行動計画である。11月5日の大統領選を控えて、アメリカ社会に波紋を広げているという。

 それもそのはず、内容を知ってビックリ。なぜなら、現代の権威主義国家のロシアや中国のトップ(独裁者)が考えていそうな体制と同じで、政権組織の構成員すべての思想を統一しようとするものだからだ。

 アメリカはこれまで、思想や言論の自由が保障されてきて、自由・民主主義国家として飛躍的に発展して世界的大国になったが、「プロジェクト2025」はこれに逆行する動きとなる。政権にとっては、同じ考え方をする者ばかり集めたら、政策も実行しやすくなるかも知れない。しかし、それをチェックする者や異を唱える者がいなくなれば、間違った方向に進んでしまう恐れがある。過去の例としては、第一次大戦後のヒットラーとナチスの台頭がある。

 トランプ氏が現れるまでは、アメリカではそれなりに民主主義が守られてきたが、2016年以降はそれが怪しくなってきた。人類は「自由」を獲得するまで争い、幾多の血を流してきたが、いざ自由が手に入ると、獲得するまでの長い歴史や困難・苦しみを忘れて、自分の意思で制約なしに何でもできる、と錯覚を起すようになった。「十人十色」といわれるように、この世の中にはいろいろな人がいていろいろな考えを持っている。しかし、社会にはお互いのために一定の規範・制約が必要だ。これを自由勝手にしておけば、社会の安寧秩序は保てなくなる。この掟が破られて、したい放題というのがトランプ氏の時代だ。この計画もトランプ党員ならいざ知らず、一般のアメリカ人にとって違和感があって、受け入れがたいのではないだろうか。