THE SECONDを観て思ったこと | 140字以上

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長めの文章を書きます。

終わってみたらめちゃくちゃ最高の大会になっていた THE SECOND 〜漫才トーナメント〜 の感想を書きます。

一応正式タイトル確認しておこうと思って今調べたら、〜漫才トーナメント〜 ていうめっちゃシンプルなサブタイトルついてて笑いました。

 

最初、M-1卒業した芸歴向けの賞レースがはじまるみたいなニュースを見かけたときは、それホンマに芸人側もファン側も望んでることなんかなってちょっと思ったし、しっかり盛り上がるようなものにできるのかなぁていうのがあって、個人的にはすぐにめっちゃ楽しみ!とは正直なりませんでした。

でも、参加者が出揃って2回戦のレポートが出てくる頃には、まずしっかり出てほしいところ、本来もっとM-1で活躍できたはずなのに叶わなかった面白漫才師たちが名を連ねていて、ノックアウトステージで対戦カードが出来上がると、タイマンていう賞レースではなかなか見ない形式のアツさもあってかなりワクワクしてきました。そしてそのワクワクが、決勝終わるまで冷まされることなく高まっていったくらい、大会としても番組としても良い熱量で満足度の高いものになったように思います。最初こんな良い大会になるとは正直思ってなかったですすみません

 

大会全体について、具体的にここがこうよかったっていうのはあるけど書くのは最後にすることにして、さっさと決勝本編の感想いきます。決勝でも最初の対戦が番組開始10分くらいですぐはじまったのよかったですね。

 

 

 

【グランプリファイナル 一回戦】

 

金属バット vs マシンガンズ

 

1試合目からもの凄い対戦カードでめちゃくちゃ面白かったし見応えエグかったです。

 

決勝大会全体としてもトップバッターとなる金属バットは、ゆったりめに掴みから入って、本筋では金属バットらしい危なめなボケも入りながらしっかり全部面白く、落とし方も金属バットらしい格好良さのある雑さで、めっちゃ金属の良さが出た面白漫才だったと思います。やっぱりネタ時間6分になったことで良い意味で遊びの部分ができて、アドリブ感のあるところも含め本来の良さがしっかり出せたんだろうなって思います。

 

対するマシンガンズは、アドリブ感あるのも含めスタイル的には賞レース向きじゃないながら、純粋な漫才の上手さだったり観客を巻き込んでウケさせる空気づくりだったり、長い芸歴の中でしっかり貯め込んできた実力を一気に爆発させてるような感じで、実際ちゃんとめっちゃ面白いから不思議なことではないんですけどノックアウトステージから勝ち進むごとに観る者を味方につけてブーストかかっていってる感があって、勢いそのままに勝ったって感じで、観てて面白清々しかったです。

 

両組ともM-1ザマンザイ含め初決勝進出同士の対決だし、芸風的には決してトップバッターを担うタイプに見えないけど意外と賑やかしとしても本格派としても対応できるという意味では適してるし、何より大会としても記念すべき初開催の決勝で金属バットからはじまるっていうのは個人的にもかなりアツかったので、最高の1試合目だったと思います。

あとネタ終わりの松本人志のコメントで、マシンガンズじゃなくて金属バットのことをM-1決勝で観るのを楽しみにしてた的なコメントがあり、金属バットをM-1決勝で観ることを望んでた者としてはこのコメントを聞けただけでも嬉しかったし、大会は変われど実際松っちゃんの前で金属が漫才してるのを観ることができて、めちゃくちゃアツかったです。

 

 

スピードワゴン vs 三四郎

 

こういう対戦カードが実現するのもザセカンドの醍醐味という感じで最高の一戦でした。

 

スピードワゴンは間違いなく一番売れてるし個人個人タレントとしてのキャラも確立されて世間に浸透してると思うけど、それを漫才のネタに落とし込みつつ、でもキャラで押し通すみたいな手癖で作る感じじゃなくて、ネタの構成としても賞レースで戦えるような感じに面白く作り込まれてて、良い具合に何してんねん感もあって、まさに自分たちにしかできない漫才に仕上がってて最高でした。

 

三四郎は、まず何よりこのネタを決勝でもかましてきたっていうのが、最高でしたね。このネタはノックアウトステージの16→8組の流れ星との戦いで披露された、瀧上曰く「ニッチなフランス映画」ですが、その表現が適切かは置いといて、少なくとも僕もこれはネット配信のみのノックアウトステージで、賞レースを予選から観に行くようなお笑いオタクの観客審査員に完全に照準を合わせたもので、めちゃくちゃ面白いし笑ったけど地上波の決勝では流石に変えてくると思ってたから、このネタを、決勝でほぼ修正なくやりきるっていうのに良い意味で驚きましたね。決勝もこれまで同様、観客審査で且つ一般番組観覧じゃないガチのお笑い好きが集まってるという状況だから勝ち筋はあったとはいえ、世間の一般視聴者に全然優しくないワードチョイス、観てるこっちがヒヤヒヤするような飛ばし具合で、でもその形振り構わず笑かしてやんぞっていう前のめりのスタイルが、僕たちお笑いファンが魅了された三四郎の漫才であることに変わりないので、この純度の高い三四郎をようやく賞レース決勝で観られたっていうのが、僕はめっちゃ嬉しかったです。キングオブコメディ→「警察に捕まり終えている」は、キンコメファン、パーケンファンの端くれである僕は少なくとも、しぬほど笑いました。

 

結果は三四郎の爆勝ちで、これは間違いなく観客審査が故の大勝利だったと思いますが、このネタを決勝でも怖気づくことなくやりきった三四郎はやっぱり最高だったと思うし、対戦相手がスピードワゴンで悲壮感が出なかったっていうのも含めて、めっちゃ良い試合になったと思います。三四郎がM-1でやり続けた「松っちゃん待っててね〜」が遂に叶ったのも、スピードワゴンがこのキャリアで賞レースで戦える漫才仕上げてたのも、どっちも最高でした。

 

 

ギャロップ vs テンダラー

 

まさかの「関西ダービー」になった三試合目も、抜群の見応えで最高の一戦でしたね。

 

ギャロップはM-1ラストイヤーにかけて物凄く脂が乗ってきた印象があったので、こういうザセカンドみたいな大会があれば順当にいけば優勝候補になるだろうとは思ってたけど、決勝一回戦からまさにその感じで、めちゃくちゃ面白くて減点余地の一切ない、完璧な漫才だったと思います。ギャロップといえばかつてはハゲなのにハゲに頼らない本格漫才師というイメージだったところから、それこそM-1晩年で遂にハゲネタをやり出した頃から確実に一段上にあがった印象があって、林のハゲに細かい屁理屈の要素を絡めるとこんなにロジカルに面白いしゃべくりになるんやっていう衝撃が、それこそラストイヤーのM-1決勝では正直うまいこと発揮できないまま終わってしまったのでようやくこのザセカンド決勝の場でそれを遺憾なく発揮できたのは最高でしたね。あと細かいけどめっちゃ重要な要素として、ネタ時間6分になったことでいつもの最高の掴み「みんな生えすぎちゃう?」ができたのもめっちゃよかったと思います。ギャロップのこの掴みはハゲネタをやる上でのマジで発明だと思うし、M-1の4分で削られたのが悔しかったので。

 

テンダラーは今や師匠クラスのレジェンドを除くと間違いなくトップ漫才師のうちの1組というキャリアで、正直負ける画がいちばん想像できないところなので相応のプレッシャーはあったかと思いますが、良い意味で普段どおりの面白い漫才をしっかり見せてくれたという感じでよかったですね。テンダラーの漫才の構成に関しては、「セカおじ」こと令和ロマンくるまが「漫才DJ」と称したり、ゆにばーす川瀬名人も「漫才ジュークボックス」と称したりするように、目まぐるしくシチュエーションを変えてその場の空気や客層にフィットさせていくっていうとんでもないことをしていて、万が一全体の構成に何よりも重きを置くような審査員にはハマらない可能性はあるけど、観客審査なら間違いなく最強だと思われる中で、堂々としたネタ披露、流石でした。

 

僕自身はM-1に準拠するようなバキバキの賞レースだとギャロップはかなり優勝候補だと思う一方、観客審査、しかもガチのお笑いファンが審査する上で、テンダラーみたいな本格派中の本格派の漫才師を負けさせることができるのか、仮に東京の若手寄りの、ちょっと土俵が違うようなところならまだしも、ギャロップっていう同じく西の本格派との対戦で、テンダラーを負かすことができるのかっていう意味で、ギャロップが負けてしまうならここかも、と思ってたので、僅差ながらギャロップが勝ち切ったのは、かなりグッときたし、ギャロップの風が吹いてると思いました。実際の観客審査の東西の内訳とかもわからないけど、ここで僅差でギャロップが勝ったという結果は、かなり信頼の寄せられるものだと個人的には感じました。

 

 

超新塾 vs 囲碁将棋

 

えげつない異種格闘技戦、これぞザセカンド、というか観客審査の妙という感じで、圧巻の見応えでしたね。

 

超新塾は勿論面白いのは間違いないしマジで全員言ってるけどウケてないところを見たことがなくて、M-1の審査員相手ならまだしもこの観客審査においては、相当面白い漫才で圧倒されるようなことがないと勝ち続けるだろうし、実際ノックアウトステージではそのとおりにウケまくってジャルジャルとCOWCOWを倒して決勝に来てるので、かなり注目度が高くなっている中で、しっかりと自分たちのスタイルでバンバンウケまくってて、素晴らしかったです。

 

囲碁将棋は、個人的にもめちゃくちゃ面白くて大好きな漫才師だし、優勝してほしい度合いでいえば間違いなく1番で、きっと僕以外にもそういうお笑いファンばっかりだと思うし何なら同業者の先輩後輩もそう思ってる人が多いんだろうなって感じがバンバン伝わってくる感じで、自分たちの実力をそのまま発揮できれば絶対勝てるっていう空気感が出来上がっていた中で、しっかりトラブルなく面白すぎる漫才を披露してくれて、本当に最高でした。だって、この一回戦で披露したモノマネの漫才、こんなにも着眼点が良すぎて、それに基づくボケも全部外さなくて、これらのボケに対するツッコミとして「生意気」って処理するのも最高だし、とにかくあらゆる点で面白凄すぎる漫才、こんなのを作れる漫才師が漫才の大会で勝てないのはあまりに報われなさすぎるので、めちゃくちゃウケて点数に繋がって、マジで最高すぎました。マジで全部面白すぎたけど、「聖徳光和夫太子」とか「ギニュー結弦」とかボケとして惚れ惚れするレベルだし、「ロボット松平健がマツケンサンバのリズムに乗せて地元愛知県豊橋市あるあるを1.5倍速で」の乗せすぎ感とかも、最高すぎましたね。

 

個人的に囲碁将棋は順当にネタの面白さだけでいえば間違いなく優勝候補で、普通に行けば勝ち進んでくれるはずだと思ってたものの、あまりにも土俵の違う超新塾相手だとどう転ぶかマジでわからない感じだったので、マジで勝ってくれてよかったです。完全私情でしかないですが、こんなにも面白すぎる漫才が、負けるところしか地上波で映らないっていうのはあまりにも悔しすぎるので。

 

 

 

【準決勝】

 

マシンガンズ vs 三四郎

 

それぞれ東京ライブシーンを沸かせてきた漫才師がぶつかるこの対戦カードが、賞レース準決勝で組まれたっていうのは相当アツかったですね。

 

マシンガンズはここまで実力者人気者を倒してきた勢いによるブーストがどんどんピークを更新していってる感じで、掴みからブチ込んでいくアドリブも全部バチバチに決まってて、マジで敵無しの無双状態に入ってる感じで、見ててワクワクさせられる凄さがありました。元々の芸風的に周囲を巻き込んで盛り上げていく感じではあると思うけど、ここまで場の空気を掌握できるのはちょっと凄すぎて、圧巻のパフォーマンスでした。

三四郎も十分面白かったのは間違いないけど、1本目の滅茶苦茶やってウケまくったんぞっていう感じよりは、若干キレイにまとまった感じがして、マシンガンズの勢いを抑え込むには至らなかった印象でしたね。

 

結果はマシンガンズが勢いそのままに圧勝して決勝進出っていう、主人公感がだいぶ出てきた展開で、期待していた以上のワクワク感がありました。三四郎が賞レース決勝で暴れまくるところももっと見たかったけど、一回戦のあのネタはめっちゃ面白かったし最強だったし、良いもの見せてくれたのは間違いないので、三四郎には出てくれてありがとうの気持ちがめちゃくちゃあります

 

あと、この試合は観客審査という意味でも印象深い一戦で、ネタ終わりのコメントで松本人志が、マシンガンズが途中紙を出したことを遠回しに否定するような場面があって(実際に直接否定はしてないけど、松っちゃんが漫才での小道具使用に否定的なスタンスである前提を踏まえてます)、こういうプロの芸人、漫才師目線の主義だったり拘りみたいなのが、審査員審査において順位を左右するという場面が、それこそM-1とかでも結構見受けられます。でも観客審査だと、たとえコアなお笑いファンを集めたとしても、寧ろコアなファン層である方が、純粋に面白かったかどうかを拠り所に評価をする印象があって、マシンガンズのこのちょっとした小道具だったり、それこそアドリブでネタから降りたりするような、細かいセオリー無視でやってる感じは、観客審査だからこそ高い評価を得られたのかもなぁと思いますね。まぁ少なくともこの試合においては仮にM-1と同じ審査員による審査だったとしてもマシンガンズの勝利は変わってなかったと思いますが。

 

 

ギャロップ vs 囲碁将棋

 

事実上の決勝戦と言ってしまうと本物の決勝戦が盛り上がらなかったみたいになってしまうかもしれないけど、本物の決勝戦もめちゃくちゃ白熱した上で、でもやっぱりこれを事実上の決勝戦と言わずにはいられなくらい、とんでもない対戦でした。

 

囲碁将棋はここにきて名作中の名作『副業』のネタで勝負してきて、ファンとしてはこのネタが賞レース決勝で披露されたという嬉しさ込みで、最高すぎました。1本目の『モノマネ』に通ずるところもありますが、マジで着眼点が最高すぎますよね。副業やりたいって言っていきなり生意気な店やろうとする前半も勿論めちゃくちゃ面白いし、それに対して副業でも企業努力すべきって言いながら努力要らない店やろうとする後半、マジで面白すぎます。最初このネタ観てて、最後に「学校指定の制服屋」出てきたときはマジでシビれましたね。努力要らないお店でここまでの正解を出してきて、ほぼ公務員って言ってしまう目の付け所の良さと性格の悪さ、衝撃すぎました。あと細かいけどこのネタの冒頭で「10年早いって言われると思って10年温めてた」みたいなちょっとした言い回しがちゃんと面白いのも僕的にかなり好きなところです。

因みに僕が初めてこの副業のネタを観たのは単独ライブ、その時点で囲碁将棋大好きだったんですけど、マジで面白すぎて絶対M-1決勝で観たいって思ったのを未だに鮮明に憶えてますね。その年はたぶん2015でM-1が復活した年で、そのとき準々決勝でこのネタやってて受かってた記憶はあるんですが決勝までは行けず、結局M-1決勝の舞台には一度も立てないままラストイヤーを終えた囲碁将棋が、こうして全国ネットの賞レース決勝でかつての大勝負ネタを披露できたっていうのは、本当に嬉しい限りだし、それだけでザセカンドの意義は充分あったと、ファンよがりだけど個人的に思ってしまいます。ありがとうザセカンド…

 

ギャロップは一回戦でハゲ全面押しだったのに対し、今度は林の細かい性格を全面に押し出したネタで、違う角度で林の意地悪で面白いところが出まくった、めちゃくちゃ面白い漫才でした。わかりやすく共感性の高い電車あるあるを林のネチネチした視点でずっと面倒くさい感じで言い続けるのがとにかく最高だったけど、それに終始せずに途中で毛利がおじいさん呼びつける感じの声のデカさに林が引っ掛かって急にそこへのイジりにシフトするっていう、それまで細かく笑いどころを積み上げてきたところから一気に、相方の声のデカさっていうちょっとしたズレへのイジりに突っ走るのが、構成としてもかなり大胆な感じで、面白すぎました。1本目にはなかった新たなギャロップの面白さがしっかり引き出されたネタだったと思います。

 

マジでどっちもめちゃくちゃ面白くて、どうやって勝敗つければええねんって思ってたら実際に審査も同点になって(しかもマシンガンズの準決勝とも同点)、奇跡的だけどそらそうなっても不思議じゃないよなって腑に落ちたの最高の結果でしたね。ただどうしても勝敗をつけなければいけない状況で、事前に決まってたルールに則り、3点の人数が多かったギャロップの勝利となりました。囲碁将棋は3点の人数は僅かに少なかったけど1点は0人でギャロップより少なく、もしかしたら1点が少ない方が優秀という見方もあったかもしれないけど、事前に3点の人数というルールで定まってたわけだし、そもそもギャロップのこの漫才で1点が存在するのは有り得ないと僕は思ったので、僕的には納得のいく落としどころでした。

あくまでも僕個人の感想ですが、漫才の台本としての面白さでは囲碁将棋が上回っていて、でも漫才を舞台で演じるという総合的なパフォーマンスの観点では、ギャロップの方が、途中の大立ち回りがめちゃくちゃ良かった分上回っていたのかなぁと、後からですが思いましたね。その見方が正しいとかはないんですけど、僕の中ではそう思ったので、腑に落ちる結果となりました。

 

 

 

【決勝戦】

 

マシンガンズ vs ギャロップ

 

最初ザセカンドがはじまったときには、まさか決勝の決勝がこの2組の対決になるなんて想像できなかったけど、これまでの過程を観てきたらめちゃくちゃ納得できる頂上決戦で、それはつまりめちゃくちゃ最高の決勝戦ということで、最高でした。

 

ただ、マシンガンズは正直エネルギー切れ寸前というか、マジでネタ用意してなかったんかって思ってしまうほどにアドリブの応酬で、ここまでも決して賞レースらしい勝ち方をしてきてなかったけど、こんな賞レース決勝見たことないっていう、凄いものを見せつけられた感じでした。一応持ちネタをやろうとする感じも途中あったけどそうじゃないって判断をしたのかそれも続かず、実質丸腰でこの大舞台を乗り切ろうと足掻く姿、でもそれが結果的に面白い漫才として見てられるというのは、結成16年以上の経験と実力の賜物で、圧巻でした。マジでザセカンドという物語の主人公だったと思います。ここで実力者に負けてしまうという展開も含めて、主人公のエピソードみたいで、正直カッコよかったです。

 

対するギャロップは、決勝3本目にしてまた別のパターンの漫才を見せてきて、正直優勝候補の1組だと思ってはいたものの、一回戦→準決勝→決勝と、ここまでのネタの幅を見せてこられるっていうのは正直想像以上で、凄すぎました。決勝の決勝で、そもそも6分ていう長めのネタ尺で、こんなにもフリに長時間かけてのひとボケ、しかもかなりベタなボケで落とし切るっていうあまりにも大胆すぎる構成、めちゃくちゃシビれましたね。こんだけフリにフッてあんなベタな天丼で落とすって、絶対観てる人全員途中でオチに気づくはずなのに、それでもこんなに大爆笑起こすって、それまでのフリの長さが全員の想像を遥かに超える量っていう異質感だったり、その長すぎるフリの間も飽きさせない細かい描写だったり相槌の感じだったり、間違いなく漫才師としてのスキルの賜物だと思うけど、にしてもこれを決勝の決勝の大舞台でやろうって踏み切ったのは、かなり博打だったと思うし、結果的にその大博打に勝ったのは、マジでカッコよすぎるし優勝に値するものだと思いました。しかもどうやら、後からどこかで言われてたエピソードとして、本当はこのネタを準決勝でやろうとしてたけど、先攻の囲碁将棋のネタでパン屋のボケが出てきたから急遽ネタを入れ替えたっていう話を聞いて、そこの直前の判断も含めて、賭けに勝った感じがマジで最高ですね。本当に優勝すべくして優勝したんだと思いました。おめでとうございます。

 

 

 

ギャロップは優勝できる実力は充分あるとは思ってたけど、それで本当に優勝したっていうのがマジで最高ですね。当然の結果といえばそうなんですけど、それを実現できるってものすごい偉業なので、マジで凄すぎます。

 

言うてザセカンドはまだ今年はじまったばかりの大会なので、ここから優勝者のメディア露出が増えていくような展開を見せていってくれるかは、勿論優勝したギャロップ本人の立ち回り次第だとは思うけど、そこに関しては正直何の心配もないというか、機会さえ与えられれば漫才以外でも間違いなく活躍できる実力もキャラも充分すぎるくらい備わってるのがギャロップだと僕は思っています。勿論本人らが大阪で地に足つけて、と考えるならそれは尊重されてほしいと思うけど、もし東京で、テレビで、っていう思いがあるのなら、その機会はどんどん与えられてほしいですね。何てったって今の東京には、千鳥も、ダイアンも、かまいたちも、麒麟川島だっているんだから、こんなにもギャロップを跳ねさせる環境が東京で整ってるタイミングで優勝できたのって絶好の機会すぎるので、正直期待感しかないです。まずは千鳥ダイアンかまいたちが揃う今年の27時間テレビ、大いにギャロップが沸かす時間帯がありまくることを信じて、楽しみにしてます。

 

 

そして、ここまで感想を書いてきたザセカンドという大会、最初からずっと言ってるけど、終わってみて改めてめちゃくちゃ良い大会だったと思っていて、M-1が年々最高を更新し続けている中で、新たな漫才の大会、しかもM-1以後を対象とした大会を、別のテレビ局、しかもフジテレビが手掛けて、こんなに良かったと思える大会になったっていうのは、正直想像できなかったです。

 

勿論、出場した漫才師がみんなめちゃくちゃ面白くてがっつり本気で挑んでて、芸歴の長さからネタだけじゃなく平場のやりとり含めてずっと客席を沸かせ続けてくれたっていう、演者が大会を盛り上げてくれた功績はとんでもなくデカいんですが、その演者の功績に水を差すような、演出の拙さやルールのガバガバさ、番組進行のいい加減さっていうのが全然なくて、ノックアウトステージを進める上で微妙に良くないかもって思うところが改善されていったりもしたし、めっちゃ偉そうな物言いするけど、フジテレビにこんな素晴らしい賞レース運営できるんかいって正直思いました。

 

特に決勝のテレビ放送は、ドキュメンタリー性のある煽りVTRはありながらそれが全然くどくなく、かなりスムーズに大会本編に移行して、4時間っていう視聴率最優先にしたらまず抑えられなそうな放送枠を確保して長丁場のトーナメントを余分な演出なくやり切ったし、番組のテーマ曲や出囃子のチョイスも良い具合に渋くて大会のコンセプトにハマってて最高だったし、マジで全部が上手いことハマってたと思いました。何と言ってもイエモンの『バラ色の日々』がめちゃくちゃバッチリハマりまくってて良すぎて、マジで大会のテーマ曲決める会議でこれ出たときめっちゃ気持ちよかったやろなってつい想像したくなりますね。あとちょっとしたところだけど、演者がセンターマイクまで歩いていくストロークの長さとかも、M-1のせり上がりとはまた異なる趣があって、かなりカッコよく映っててめちゃよかったです。マジで今回の演出面でイヤってなったところ全然無かったです。

 

審査についても、結果論だけど観客審査を採用したのは案外よかったのかなって今となっては思ってます。僕はお笑いの審査方法として、観客審査とか視聴者審査とか一般人に審査させるのは否定派で、そもそもお笑いの審査方法に正解なんて無いとは思ってるけど、どちらかといえば審査員による審査、しかもできるなら現役のプレイヤーに近い実力者が審査するのが、最も納得感があって適当であると思っています。ただ、ザセカンドという、芸歴の長い、漫才師として一定の地位を築いている出場者に対する審査方法としては、これからの芸人を審査する多くの賞レースと違う視点の評価も必要だろうし、ベテランになるにつれてより目の前の観客を笑わせることが求められるようになっていくだろうと考えると、観客審査というのは正解だったのかもしれないと、ノックアウトステージから観ていく中で徐々に思えていきました。

 

そう思えた要因として、今回の観客審査が、純粋に一般人の審査じゃなくて、ノックアウトステージの更に前の予選に観覧に行った人を主に対象として選ばれているっていうのが、結果かなりこの大会にマッチしてたように思います。勿論賞レースを予選から観に行くような人は間違いなくお笑いオタクで、決してお笑いに対し一般的な感覚をもっているとはいえない層なので、そんな人たちが審査したら、そら娯楽映画よりニッチなフランス映画が勝つなんてことも起こり得ます。ただ、そんなお笑いオタクによる審査だったからこそ、明らかに変な、全然そっちちゃうねんみたいな審査結果になることがほぼ無かったというか、自分の好みとは違ったとしても納得感はあるっていう結果ばかりだったという印象があります。そらもっと一般的な感覚の人らが審査したら、もっとわかりやすくて、簡単に笑えるようなネタが評価される傾向の大会になってただろうけど、僕はやっぱり、お笑いの賞レースっていうのは、まだ世間に見つかってない面白いお笑いを、これが面白いんだって世間に提示する媒体となるべきだと思っていて、今既に世間でウケているものよりも、新しくて、バレてなくて、もしかしたら判断に迷うようなものを、はっきり面白いものとして世に送り出すためには、そのジャッジには玄人的な目線が必要で(だから僕は賞レースは原則審査員審査がいいと思ってます)、今回のようにコアめのお笑いファンを中心に審査員を選んだというのは、結果的に審査員審査に近い役割を担えるという意味で、功を奏したように思います。

あと一応ここでミスリードがあってはいけないのでことわっておくと、お笑いオタクは別に大衆ウケが嫌いでニッチなのだけが好きってわけじゃなくて、大衆ウケもニッチさも両方面白いと思えるのがお笑いオタクだっていうのはご承知おきいただきたいところですね。僕はそこまでじゃないかもですが、所謂お笑いオタクと呼ばれる人たちは一般人が思う以上に全てのお笑いを等しく愛せる人が多いです。

 

あと、ノックアウトステージがはじまったとき、審査方法は観客審査で、しかもその観客に審査コメントを求めるっていうのがわかったときは、正直エグいことしてくれんなぁって思ったし、未だにここだけはこれが正解なんだっていうようにも思えてはいないけど、制作の方のインタビューとかを読んでると、観客審査員にコメントまで発言してもらうことで責任感が生まれて、極端に恣意的な審査が無くなるだろうっていう想定があったという背景が理解できて、決して軽い気持ちで、コメントまで言わせたらおもろいんちゃうかっていうノリで決まったわけじゃなく、めちゃくちゃ考えられての判断だったんだっていうのがわかって、正直なるほどと思いましたね。実際観客審査のコメントを聞いていく限り、正直この人イタいなって感じたのはノックアウトステージ序盤に2〜3人いたかなって程度で、決勝では1人もいなかった印象だし、概ね真摯に審査されてるのが伝わってきて、一定の効果はあったのかもしれませんね。

勿論お笑いを審査する上でこれが正解なんてものは無いので、出来る範囲で最適解に近づけていくしかないんですけど、ここまでしっかり大会そのものを良いものにするために考えられているっていうのは、イチお笑いファンとして嬉しい限りです。

 

 

ここまで長々と書いてきて最後にまた同じこと言ってしまうけど、本当にザセカンド、思った以上にめちゃくちゃ良い大会になって、マジで最高でした。どうやら来年も開催されそうな感じはあるけど、この感じでやってもらえるならきっと次回もめっちゃ良い大会になってくれるだろうし、芸歴制限がない以上、次また出場するかどうかは漫才師本人らの意思でしかないので、M-1が終わっても戦い続けるという過酷さはあるけど、次回はどういった挑戦者が、どういったドラマと面白漫才を生み出してくれるか、楽しみでしかないです。